最先端ガン治療 BNCT その2

Boron Neutron Capture Therapy -2-


ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)について、いくつか追加情報です。

BNCTの当面の適用分野としては、従来の陽子線治療などでは不可能だった、浸潤性が高く進行性も速い悪性脳腫瘍、放射線に感受性が高く転移しやすい皮膚悪性黒色腫、外科手術では機能や外見が損なわれる頭頚部ガン、すでに線量上限までの放射線治療を受けている再発ガン、数が多くて照射の困難な多発ガンなどがあります。

たとえば、歌手・プロデューサーのつんくさん。喉頭ガンにかかり、手術をして声を失ったのは記憶に新しいところですが、もし、BNCTであれば、声を失うことなく治療ができたでしょう。タイミングが悪いことに、その治療が可能だった原子炉、京都大学の原子炉や日本原子力研究開発機構のJRR-4は、福島事故の結果、「原子力規制委員会による新規制基準に適合していることの確認(適合確認)」を行うことになっていて、現在、休止中。正直、厳しい新基準に適合することは難しく、このまま廃炉になるのではないでしょうか。

そこで、原子炉でなく、加速器を使ったBNCTの稼働が待たれるのですが、南東北病院のサイクロトロンを使ったBNCT以外は、どの加速器も性能を出すことが出来ず、計画どおりには進んでいません。

唯一、中性子の発生に成功して治験の始まりそうな南東北病院ですが、中性子を減速する際の核反応のため、患者はかなりのガンマ線も同時に浴びてしまいます。そのリスクが無視できる人(それ以上に深刻な状態にある患者)しか照射することができないという大きな欠陥があります。BNCT本来の実力を出せないのではないかと危惧します。

もし、サイクロトロンでなく、線形加速器や静電加速器を使ったBNCTが実用化されれば、ガンマ線照射量の少ない、本当に身体に優しいBNCT治療ができるようになるでしょう。BNCTの照射は基本的に1回、30分程度のみ。陽子線治療だと10−15回程度、ガンマ線治療だともっと時間と回数がかかります。

しかもガンマ線治療だと、正常な細胞も傷つけてしまい、皮膚が爛れてしまうなどの深刻な副作用があります。

原子炉を使ったBNCTの臨床試験では、通常ならガン細胞が減るのに1ヶ月かかるところを、2,3日に短縮できたという成果があります。『一度、BNCTで治療を行った医師は、その虜になる』と言われる所以です。

ただ、BNCTの欠点として、熱中性子の飛程が6センチくらいと短いので、身体の深い部分を照射できないということがあります。悪性脳腫瘍、皮膚悪性黒色腫、頭頚部ガンなどは浅いのでBNCTで治療できるのですが、その他のガンは難しいかなと思っていました。

ところが、専門の医師に聞きますと、「それは問題ない。開腹して臓器をどけてから照射すればいいのだから」と言います。1回のみ、30分程度、もし、加速器の性能が上がって十分な中性子量があれば、数分で終わるのだから開腹しても問題ないのだと。

そうなると、BNCTは血液ガンを除く殆どすべてのガンに適用可能になります。陽子線治療とか重粒子線治療と役割分担するのではなく、それらの適用範囲を含め、すべてBNCTで可能になる訳です。

治療費という観点ではどうでしょうか。治療費は、施設のコストを照射する患者数で割った値が基準になります。陽子線施設の建設コストは約100億円、重粒子線治療施設はその倍以上で、200億円と言われています。

一方、BNCT施設は50−70億円程度。BNCTは、照射回数が基本的に1回のみ、多くても2回ですから、10回以上の照射回数が必要な陽子線や重粒子線と比べて患者ひとりあたりのコストは安くなるでしょう。現在の陽子線治療の費用は300万円くらいですが、BNCTの費用はそれより格段に安くなると期待されます。