陽子線がん治療施設は動いてるかな

Monitoring of the 230MeV Cyclotron Facility for Proton Therapy


病室から、陽子線がん治療装置棟のクーリングタワーが見えます。

窓から外を見ると、クーリングタワーから昇る水蒸気が目に入り、それで、がん治療装置のサイクロトロン加速器が稼働しているかどうかが分かるのです。

週末の土日は止まっているのですが、時々、ウィークデーにも止まっていることがあって、フィラメント交換のためのメンテなのかな、でも、こんなに稼働率が悪くて大丈夫かいなと、心配していました。


左図が、この病院のHPに載っている、陽子線がん治療施設の鳥瞰図です。

この病院の陽子線がん治療装置は、医療専用陽子線治療システムとしては国内初(世界で2番目)のもので、国内では珍しく、線形加速器でなく、サイクロトロン加速器を使っています。住友重機械工業(株)が1997年に製造した、P235型サイクロトロン(230MeV/0.3mA)です。

今となっては古い型で、アーク放電の正イオン源を使っています。同社の最新の世界初の加速器を使ったホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のサイクロトロン加速器では、負イオン源を使っていて、電流値も、ビーム取り出し効率も大きく改善しています。


古くなって稼働率も落ちているのかな、大丈夫なんだろうかと心配してたら、今年の初めに、次のようなニュースが流れました。

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住友重機械工業は2016年1月5日、陽子線治療システム納入先の国立がん研究センター東病院において、ラインスキャニング照射法による治療第1例が2015年12月中旬に完了したと発表した。同照射法を用いた陽子線治療の実施例は世界初という。

スキャニング照射法は、細いペンシル形状のビームをがん細胞の形状に合わせて3次元的に照射する手法。従来一般的だった拡大ビーム法に比べて、複雑な形状のがんに対応しやすく、周囲の正常細胞への照射線量を抑えられる。

このうちラインスキャニング照射法は、ペンシルビームの走査速度を変調させつつ一筆書きのように連続照射する方法だ。球状のビームを断続的に照射するスポットスキャニング照射法などに比べて照射時間を短縮でき、将来は呼吸で動く臓器への治療効果も期待できるという。住友重機械工業の陽子線治療システムは、連続かつ高線量率のビームを安定して発生できるサイクロトロンを使用しており、スキャニングに適応しやすい特徴を持つ。
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簡単にいえば、サイクロトロン加速器のビームは細いので、がんの形状に合わせてビームを走査して、周囲の正常な細胞への照射量を減らせるように改良したということ。

なるほど、そういった改良をやってたから、ウィークデーでも停止していることがあったんだなと納得です。


でも、実は、サイクロトロンの効率を上げることができる、大電流の負イオン源とか、フィラメント交換の不要なマイクロ波イオン源とかは、私の得意分野なんですね。

しかも、核融合研究用に世界最高性能のものを開発してきたので、自分で言うのも何ですが、世界の第一人者と言ってもいいくらい。実際に、それらの知識や技術の波及を図るために、サイクロトロン用イオン源の大電流化に関する共同研究を住友重機械工業とやっているところです。

もし、長期にこの病院にお世話になるのだったら、ここの陽子線がん治療施設の高性能化のお手伝いをしてもいいんだけどなあ・・・と思ったりしています。自宅もすぐそこだし。