再生医療・遺伝子編集治療のみらい

Future of Regenerative Medicine and Geno Editing Therapy


ガンマ線照射量の少ないBNCTが実用化されれば、本当に身体に優しい、ガン治療法になります。しかも、BNCTその2で書いたように殆どのガンに有効で、しかも1回の照射でよくて、コスト的にも陽子線治療と比べて安い・・・となれば、早く実用化して、私がガンになった時にはそれで治療してもらいたいと思っていました。

ところが、私が実際に罹った病気は白血病。BNCTでは治療不可能なガンでした。(ガクッ)

それでは、白血病には現在の標準治療である抗がん剤治療しか無いのか・・といえば、最新の治療法として再生医療や遺伝子編集治療があるようです。

まずは再生医療。心臓の筋肉を補強する再生医療などは、今年から保険適用になるとのこと。まずは心臓のような簡単な臓器から始めて、最終的には腎臓などの複雑な臓器にまで適用されるようになるでしょう。

更に、iPS細胞から、いちから臓器を作る研究も急速に進んでいて、現在は動物実験の段階ですから、5年か10年というタイムスケールで、iPS細胞の再生医療も人間への臨床試験に移行すると期待されます。

白血病についていえば、免疫細胞をiPS細胞から作製する研究が進められています。


iPSで白血病治療研究…京大など、新年度から
2016年01月11日 読売新聞記事

血液のがんである白血病をiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って治療する研究を、京都大などのチームが新年度から本格的に開始する。

がん細胞への攻撃力が高い免疫細胞を、白血病患者自身のiPS細胞から作る計画で、京大倫理委員会の承認も得た。iPS細胞から作った免疫細胞でがんを治療した臨床例はまだなく、チームは動物実験などで効果が確認できれば、患者の体内に免疫細胞を入れ、安全性や有効性を検証する臨床試験(治験)を2019年にも始めたいとしている。

iPS細胞から作るのは、「キラーT細胞」と呼ばれる免疫細胞の一種。がん細胞やウイルスなどの「敵」を攻撃し、細胞表面にある分子の違いで攻撃相手を見分ける。

キラーT細胞を使ったがんの治療法は国内外で研究されているが、細胞ごとに攻撃する相手が異なるほか、培養して増やすのが難しいなどの課題があった。

京大再生医科学研究所の河本宏教授らは、キラーT細胞をiPS細胞に変えても、元のキラーT細胞が持っていた攻撃する相手の記憶は残る点に着目。特定のがん細胞を攻撃するキラーT細胞を、無限に増殖できるiPS細胞に変化させて大量に増やし、患者の体に戻せば、がん細胞を効果的に攻撃できると考えた。


2019年の治験開始ですから、私の白血病も5年頑張れば、この治療を受けられるかもしれません。

海外では、さらに進んで、免疫細胞の遺伝子を編集する白血病の治療が開発されています。例えば、2014年にベンチャー企業として創業した、米国のインテリア・セラピューティス社は白血病の治療に同社の持つ遺伝子編集(ゲノム編集)の技術を適用しようとしています。白血病では、ガン細胞を攻撃するはずの免疫細胞の働きも低下し、ガン細胞が増殖します。最近の研究では、免疫細胞に、ある遺伝子を加えると働きが強くなり、ガン細胞の増殖を止める効果があることが分かってきました。そこで、同社では、身体の中から免疫細胞を取りだし、そしてターゲットとする場所にゲノム編集で切り込みをいれ、外から遺伝子をつけ加えて、強力にした免疫細胞を大量に作り出し、身体の中に戻そうとしています。



例えば、以下は、2015年11月23日の記事で、遺伝子編集により11ヶ月の幼児の白血病を治療したというものです。12月始めに開催された第57回米国血液学会(ASH)年次総会で発表されたとのこと。実は、私の転院が急に早まったのは、転院先での私の新しい担当医がその学会に参加するため、出国前に診察をしたいという事情があったようです。


遺伝子編集による、白血病治療の記事

http://biopharmconsortium.com/2015/11/23/gene-editing-technology-used-to-treat-infant-with-leukemia/

Gene editing technology used to treat infant with leukemia
BY ALLAN HABERMAN NOVEMBER 23, 2015 CANCER, DRUG DEVELOPMENT, DRUG DISCOVERY, GENE THERAPY, HABERMAN ASSOCIATES, IMMUNOLOGY, PERSONALIZED MEDICINE COMMENTS

In November 2015, the use of gene editing technology to treat an 11-month-old child with leukemia was reported in news articles in Nature and in Science. Because of the human-interest value of this story, it was also reported in Time magazine and in the New York Times.

Data from this first-in-humans clinical use of the therapy will be presented at the 57th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting in Orlando, FL in early December 2015.


エイズ(HIV)の治療にはすでにゲノム編集が使われています。リンパ球の表面にはエイズウィルスが結合しやすい突起があります。それを足がかりに、ウィルスがリンパ球の中に侵入し、増殖していくことがわかってきました。そこで、この突起に関係した遺伝子をゲノム編集で切断すれば、突起がなくなり、エイズウィルスがリンパ球に侵入できなくなるという原理のようです。


スイスのノバルティス、遺伝子治療薬分野を強化 米2社と提携
2015年 01月 7日 22:59 JST ロイター記事

[ロンドン 7日 ロイター] - スイスの製薬会社、ノバルティス は、有望とされる遺伝子治療薬分野を強化する。米バイオテクノロジー2社と提携し、新たなゲノム(全遺伝情報)編集技術を獲得する。

提携したのは、インテリア・セラピューティクス(Intellia Therapeutics)とカリブー・バイオサイエンシズ(Caribou Biosciences)の非上場企業2社。CRISPRと呼ばれるゲノム編集技術が、新薬開発、研究手段の両面で可能性があると判断、2社と提携したとみられる。

インテリア・セラピューティクスとの提携でノバルティスは、患者の免疫細胞を修正し、がん細胞を認識、破壊するようにする遺伝子に重点を置くプログラムの開発などで、独占的な権利を得る。

カリブーとの提携では、新薬開発に向けた研究手段としてのCRISPRの活用に力点を置く。


一方、米国を中心に、ゲノム(全遺伝子)解析による診断・個別化治療が進んでいます。アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子診断により乳がんになる可能性が高いということで、まだ乳がんになっていないにも関わらず、乳房の切除手術をしたのは記憶に新しいところです。

治療においても、Precision Medicine(プレシジョン・メディシン:精密治療)と呼ばれる、ゲノムを基に個々の患者の性質に合わせて治療を行う、個別化治療が進んでいます。例えば、多くの人に効果のある薬が、遺伝子の型をもつ一部の人にとっては、むしろガンの増殖を助けることが分かっています。無駄な投薬をおさえ、その人に本当に効果のある治療のみを行うという方向です。

日本では、ガンの標準治療というものがあって、そこからの逸脱は許されていません。いわば、マニュアル医療というべきもの。そして、保険でカバーできる標準治療が尽きた時点で、治療法なしという余命宣告が行われています。

陽子線治療、重粒子線治療、そしてBNCTも保険の範囲外になっていて、高額な治療費がかかります。それらの治療はまだしも、免疫療法などの怪しげなガン治療がはびこる原因ともなっていると思います。

いずれ、日本でも遺伝子診断・治療が本格化し、有用なアイソトープを用いたPETや99Tcなどの核医学診断法がもっと進歩し、身体に優しいBNCTが実用化されれば、ガンの治療法は大きく変わるでしょう。現在の、まずは抗がん剤・手術ではなく、核医学による精密な診断とゲノム(全遺伝子)解析に基づいて、まずはBNCTでガン細胞のみを選択爆撃し、患者自身の免疫力を活用して、患者の生活の質(Quality of Life)を保ったままガンを治す時代になると期待します。

この時、病院内のヒエラルキーも大きく変わるでしょう。現在の放射線科は外科手術・内科処置のお手伝いの役割が主で、放射線治療を行うのは手の施しようのない患者というケースが多いと思いますが、将来は、核医学による診断、遺伝子解析、医学物理士によるBNCTや陽子線治療の治療計画の作成が、ガン治療の主役になるのではないでしょうか。