放射線 ただちに健康に被害はでない・・・について

Radiation effects on health


放射能の影響について、
『直ちに健康に被害は出ない』
という言い方がよく分からない、直ちには出ないけど、後で被害が出るののかという疑問を良く聞きます。

本当は、全く問題にならないレベルなので、『健康に被害ありません』と言い切っていいのです。ところが、公式にはそれが言えない。なぜ『直ちに健康に・・』と言わざるを得ないかという話をしたいと思います。

全く問題にならないなら、お前が食べてみろというなら、平気で食べます。1年中でも、何年でも食べます。放射線の専門家はみんなそうだと思います。それをお伝えした上で、話をさせてください。

まず、よりよく理解して頂くために、クイズをひとつ。

『コップ1杯の水を取り、その水の分子に赤い色をつけて海に戻します。世界中の水が良く混ざった後、世界のどこかで、もう一度コップ1杯の水を汲んだ時に、そのコップの中に赤い色の分子が入っているか?』

という問題です。

この解答を以下に記しますが、アボガドロ数という言葉が分からない人は結論だけ見てください。


コップ1杯の水の中の分子数:モル数xアボガドロ数は、
10モル(コップ1杯のモル数)x 6x10の23乗(アボガドロ数)= 6x10の24乗個

一方、世界中の水の量は、
半径7000kmの地球の表面積の70%が海で、海の平均深度は3800mなので、
球の表面積=4πr2を思い出して、
4x3.14x(7x106)^2(表面積)x0.7(海の割合)x3.8x103(深さ)= 1.6x10の18乗立方メートル

6x10^24個の分子が、1.6x10^18立方メートルにばらまかれる訳だから、
1立方メートルの水には、
6x10の24乗/1.6x10の18乗=3.7x10の6乗個の赤い分子がある。
コップ1杯の水(200ccには)、
3.7x10^6x200x10^-6= 740個


結論:740個の赤い分子が含まれる。

世界中の水で希釈しても、何百個という分子が残ってしまう。それぐらい、原子とか、分子の数は多いということですが、放射線の測定器は、その原子の1個、1個を数えることができるのです。ベクレルという単位は、1個の原子が放射線を出せば、1ベクレルです。

だから、いくら放射性物質が薄まっても、きちんと測定することができます。

よく、『放射線は目に見えないから怖い』といいますが、専門家から言わせれば、『放射線くらい目立つ、測りやすいものはない』のです。
ごく少量であっても検出できるのです。
恐らく今回の福島原発からの放射能は、地球の反対側でも検出できるでしょう。

それでは、『検出できる』、イコール『危ないもの』かという問題です。

実は、放射線については、『検出できる』イコール『危ないもの』としているのです。

放射線というのはいくら量が少なくても、ある確率で被害があるとしてきました。これは安全側に考えるためです。実は、少量の放射線はむしろ刺激を与えて健康にとって有益だ(放射線ホルムシス効果といいます)という考え方もあって、実際に、ラドン温泉やラドンの洞窟で治療している例もあります。

私は、ホルミシス効果があるとまでは言いませんが、ある量以下の放射線は全く害が無いと思います。自然放射能に耐える能力を得たからこそ、生物は陸上に上がってきたのです。

実際に、世界では、自然放射能の高い場所がたくさんあります。

今回の事故で、東京が放射能汚染され、自然放射能のレベルが通常の0.05マイクロシーベルト毎時から、ピークでは0.5マイクロシーベルト毎時に、そして現在でも、0.1マイクロシーベルト毎時と2倍になっています。茨城県では、0.2マイクロシーベルト毎時で4倍です。

でも、この放射能レベルは、実はローマの自然放射能レベル0.25マイクロシーベルト毎時よりも低いのです。今回の事故で、イタリアの新聞に、汚染された東京の放射能レベルを測ったら、それよりローマの方が高いので驚いたという記事がでています。ローマは石畳など花崗岩でできているので放射線レベルが高いんですね

その他、放射能レベルの高い地方として有名なのは、
ラムサール(イラン) 平均1.16マイクロシーベルト毎時、最高29.7マイクロシーベルト毎時
ガラパリ(ブラジル) 平均0.63マイクロシーベルト毎時、最高4マイクロシーベルト毎時
ケララ(インド) 平均0.43マイクロシーベルト毎時、最高4マイクロシーベルト毎時
陽江(中国) 平均0.4マイクロシーベルト毎時、最高0.62マイクロシーベルト毎時

です。ラムサールは、カスピ海沿岸の町で、水鳥の生息地である湿原に関する国際条約(ラムサール条約)が採択された開催地として有名です。温泉堆積物であるラジウム226のせいで高くなっており、調査によれば、屋内の壁表面では、130マイクロシーベルト毎時に達し、生活環境を考慮した住民の年間線量は71ミリシーベルトと推定されています。

これらの地方にはたくさんの人が何世代にもわたって住んでいて、疫学調査も行われましたが、これまでのところ危険性を示す有意の差は認められていません。

ですから、現在、基準値としているような、それよりもはるかに低いレベルの放射能については、実際には害があるとは証明されていないのですが、それでも、ある確率で害があるという安全側の考え方をしているために、その確率で言うと、乳幼児に飲ませ続けた場合の危険性は『タバコで肺ガンになる確率の何万分の一であるが』、ゼロではなく、あると言っているのです。

一方で、タバコの害。これは疫学的に証明されています。タバコを吸う本人だけでなく、副流煙を吸う家族についても発ガン性が高まります。かなり高い確率ですが、タバコを吸う人は、それくらいなら許容できるとしている訳です。

ほんの僅かな危険性も許容できない、という人はしょうがありませんが、ローマに住んでもいいと思う人は、東京や茨城から逃げ出さなくても大丈夫です。バナナを食べてもいいという人は(実はバナナは典型的な高放射能食品です。空港の放射線検出器を誤動作させてしまうくらい)、基準値レベルの野菜を食べても大丈夫です。

タバコを吸いながら、ペットボトルの買い占めに走るというのは、とても滑稽で、欺瞞に満ちた行動だと思います。

放射線は、いくら少量でも検出できる、そしていくら少量でも、ある確率で害があるとしてきたために、極めて少量であっても公式には『全く害はありません』と言えないのです。

しかし、その危険性は、たとえ確率的にあるとしても、問題にならないほど僅かです。『直ちに健康に・・』という言葉を心配して、体調を乱す方が、よっぽど危険だと思います。

テレビを見ていて、『私に言わせれば、全く害はありません』と断言する専門家がいました。うまい事を言うなと思いました。しかし、その人も、個人的見解であることを示す『私に言わせれば』を抜かして、『全く害はありません』とだけ言うのは間違いです。公式には『直ちに健康に被害はなく・・・』と言わざるをえないのです。

本当は、ある値以下は全く問題ないと断言できる、しきい値という考え方を導入すべきでした。それを、安全側だからといって、いくら少なくても確率的に危険性があって・・という考え方をしてきたために、あやふやな言い回しになり、風評被害を拡大させているのだと思います。次の回には、それについてもっと詳しく述べたいと思います。