熊本の地震は予測できなかったのか

Prediction or estimation of the earthquake in Kumamoto


熊本の地震について、いくつか思うこと。

1.地震の予測について

1962年に「ブループリント」と呼ばれる地震予知の提言書が纏められ、「10年後には地震予知に十分な信頼性をもって答えることができるだろう」(同提言中の文章)として、巨額の国家予算が地震予知に投入されてきました。

ところが、1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、そして2011年の東日本大震災など、全ての地震の予知に失敗し、あの巨額な予算の投入は何のためだったのかという批判が出て、「予知のためではなく、学問的な研究だ」「学問的ならそれなりの予算を要求すべきだ」「予知のための予算を防災に振り向けていればもっと成果があがったはず」などの意見のあげく、「予知はできないが、予測は可能だ」ということになって、現在も年間100億円程度の予算が使われています。

その成果のひとつが、全国地震動予測地図で、2015年版は右図のようなものです。(内閣府の地震調査研究推進本部作成)

「今後、30年間にその値以上の揺れに見舞われる確率が3%となる震度」というもので、普通に考えれば、「この震度の地震が起こる可能性があるので、建物の耐震などの参考にしてくださいね」というものだと思います。

これを見ると、今回の南阿蘇村や益城町は黄色の震度5強のようにみえます。少なくとも震度6強とか震度7が起こるとは思わないでしょう。もし、私の親が南阿蘇村に住んでいて、その家が古くて震度6以上には保たないと言われていても、この予測地図を見る限りにおいては、耐震補強をしろとは勧めないでしょう。

もし、この地図がなくて「日本全国、どこでも震度6以上の地震が起こる可能性がある」と言われていたら、耐震補強した方がいいと勧めたかもしれません。つまり、この地図があったために、かえって対応を間違えてしまったのではないでしょうか。

南阿蘇村で亡くなられた方々の年齢をみると、70代から90代が多くて、古い家屋が倒れて押しつぶされた方が多いようです。予知は無理で、予測しか出来ないにしても、もう少し役に立つ予測ができなかったのかと思います。(注1)


2.取材ヘリについて

東海大学の学生アパートが崩壊して、1階部分に住んでいた学生が亡くなられています。前途ある若者が、若くして突然の災害で亡くなるのは本当に可哀想です。

地震の朝、1階部分が崩壊したアパートの救助作業が始まる時に、上空からの映像を地上波テレビでずっと流していました。どうやら複数のヘリコプターが飛び回っていたようで、現場はきっと、ヘリの騒音がすごかったことでしょう。

こんな状態で、助けを求める学生のたてる僅かな物音や声が聞こえるのかと心配しました。

取材による救助活動の妨害の問題については、以前から指摘されていることだと思うのですが、今回も相変わらずヘリコプターの映像や傍若無人な取材陣の活動が目に付きました。

いまは、グーグルマップがありますから、上空からの映像はそれで十分で、それに地上からの映像を重ねればいい筈です。不明者が出た南阿蘇のログ山荘「火の鳥」の建物などは、へりからの映像よりもグーグルマップの方が被災以前の状態がよく分かります。

センセーショナルな報道をして「可哀想だ」「大変だ」と騒ぐ前に、いかにして、一人でも多くの人を助けるかということを、特に地上波テレビは考えるべきと思います。

3.備蓄や装備について

東日本大震災の時に、私の住んでた村でも避難勧告がでて、村民たちは指定された村の施設に集まりました。とても立派な施設だったのですが、そこには非常用発電機が無かったのです。

私は勤務先の施設の点検や会議を終え、暗くなってから妻を探しに避難場所に向かいました。すると、真っ暗な中、多くの人が身を寄せ合っていました。電気が無いので、テレビ放送もなく、一切の情報なし。携帯電話も繋がり難い状態でした。

しばらく懐中電灯で妻を探したのですが、『こんな所にじっといるタマじゃないな』と考え直して、すぐに避難場所を出て、心当たりを探しました。すると、案の定、車の中で携帯電話の充電をしながら、車載ナビでテレビ放送を見ていたのです。

車の中には、私の登山用のテントや寝袋、食料がありました。家に置いているものを含めれば、1週間分の食料と燃料、雨の中でも快適に過ごせるゴアテックスのテントと寝袋があります。登山用の携帯浄水器もありますから水も十分。当時はイーモバイルのポケットWifiを使っていたのですが、携帯は繋がらなくても、SNSやメールでの連絡は可能でした。

実際には、自家発電設備をもつ秘湯(谷地温泉)に行って、温泉に入りながら冬期限定「飲み放題」のビールを飲んで過ごしたので、私の装備は使わなかったのですが、もしもの時の準備としては、登山グッズがとても役に立った、というべきでしょう。

と、これは、いつも最新のモバイルグッズや登山用具を買って、『無駄なものばかり買って!』と妻に非難されている私の弁解です。


注1)読み返してみると、巨額の予算を使って、予知どころか予測もできないのかと非難しているような印象を与えるかもしれませんが、決してそうではありません。良い予測を行うためには基礎研究が大切です。しっかりと予算を確保して、研究を深め、今後必ず起こる地震において、一人でも多くの人が助かるように『役に立つ予測』をすべきと思います。そのためにも、福島での年間1ミリシーベルトという除染を目指す(誰も助からない、ただ、風評被害を大きくして住民の帰還を阻む)、無駄な予算の使用は本当に残念です。