小池百合子氏にみるポピュリズム


着任早々、豊洲市場への移転問題で大きなポイントを上げている小池都知事。果たしてこれで、政治家としてちゃんと『落としどころ』を考えているのかと心配になります。

私のような技術者・科学者から見ると、盛り土問題については、全体に盛り土をして『臭いものに蓋をする』よりも、建物の地階部分にユーティリティスペースを設け、定期的に地下水などのモニタリングをする方が安全で自然だと思います。だからこそ、その設計が違和感をもたれることなく自然に通っていったんでしょう。ただ、それが広報されていた方法と違う、その1点を突いて政治問題化し、都政に風孔を開けたのは、さすがニュースキャスター出身の小池氏だと思います。

豊洲問題については、それに軽薄な日本のマスコミが乗っかり、『強アルカリの水がたまっている』『環境基準を上回る砒素やベンゼンが検出された』などと大騒ぎです。記者たちに科学的素養が無いのが丸わかりで、コンクリートは炭酸カルシウムですから、そこに水が溜まればアルカリ性は当たり前。きちんとPH計で測定したのならともかく、赤いリトマス試験紙が真っ青になったから強アルカリというのは乱暴です。また、環境基準は飲み水の基準ですから、それを僅かに上回ったからといっても、飲まないでそのまま川や下水に流せばおしまいです。むしろ、総合的な環境基準でいえば、現在の築地の方が新しい豊洲よりも遥かに悪いのではないでしょうか。築地の地下水を調べれば、環境基準(飲み水)をオーバーした物質がたくさん見つかるのではないかとも思います。

この小池都知事の問題提起とマスコミのキャンペーンによって『豊洲は汚い』という意識が都民に刷り込まれ、せっかく作った豊洲を放棄するようなことになれば本末転倒です。それこそ税金の無駄です。今後、都政を預かる小池都知事としては、どこかで『豊洲は安全です』と言わないといけなくて、そこまで考えているのかと心配になります。

マスコミの非科学的な報道により、『豊洲は汚い』という意識は既に都民に刷り込まれているのかもしれません。今後、ちゃんとしたメディアが、例えば現在の築地と豊洲の総合的環境基準の比較を行い、築地よりも豊洲が安全であることを証明し、また、政治的には豊洲でなく『新築地』と呼ぶことにするというような方策をとらないといけないと思います。

今後、来年度予算編成作業や2020年の東京オリンピックに向けた準備など、小池都知事の本当の手腕が試されることになります。人気取りのポピュリズム政治に陥ることなく、『落としどころ』やバランスを考えた政治を期待したいものです。


さて、ここで、政治家の前職について考えてみます。素養として何が必要か、政治家に必要な広い見識、現在と未来を見通す深い洞察力、そして、必要な時には『民意の暴走』を止められる信念と信頼感をもてる職業という観点です。

私の意見は次の通りです。

政治家にしてはいけない、最悪な順に・・・

1)市民運動家;ひとつの事に絞って血祭りに上げるような手法は政治には向きません。また、視野の狭い人が多く、独りよがりの『正義』を唱えて暴走する。代表的な政治家は市川房枝の市民運動に共鳴して政治家となった、管直人氏。彼が日本のトップに立った事は、日本にとって大変に不幸なことだった、というのは全ての人が共感するのではないでしょうか。

2)ジャーナリスト、ニュースキャスター:注目を浴び、スタンドプレーで喝采を浴びることを無上の喜びとする本能がある。民意に迎合し、ポピュリズムに陥り易い。代表的な政治家は小池百合子氏。鳥越俊太郎氏なども政治家には全く向かないということです。

3)俳優、スポーツ選手:これはもう問題外。単なる知名度、集票マシンは、政治家としてどうかと思います。

4)弁護士:法律や国際法などの基礎があり、本来は政治家に向く。弁も立つ。信念と正しい問題意識をもち、広い視野を持てばいい政治家になるでしょう。ところが問題は、日弁連。イデオロギー色の強い人が多く、イデオロギーが先行する政治は必ず失敗します。

ただ、弁護士出身者にもいい政治家がいて、例えば、稲田朋美防衛大臣。政治家になるつもりは無かったが、弁護士として南京事件の遺族の名誉回復の仕事をしている中で、南京事件が明らかなねつ造と知り、日本の恥辱を晴らすために活動していたところリクルートされて政治家になったという経歴は素晴らしい。国会中継などを見ていても本当の愛国心がある事が分かります。

橋本徹氏も、弁護士としての素養に基づき、バランスの良い政治家として評価されますが、彼の場合、民意に重きを置きすぎていると思います。政治は結果です。軽薄な民意に迎合するふりをしつつも、正しいと思う政策をどうにかして進めていくという技が必要です。英国のEU離脱問題もそうですが、政治上の重要な判断を国民投票や住民投票でやるなどというのは愚の骨頂です。

5)二世議員:世襲などと批判の多い二世議員ですが、子供の時から政治を身近に感じ、帝王学を学んだ優秀な人は、政治家として最適と思います。

6)国際政治学者:若手の論客として三浦瑠麗(みうらるり)氏が注目されています。『世界の戦争で死ぬひとを一人でも少なくするためにはどうしたらいいかを考えている』という、徹底的にリアリストに徹しているところがいいです。

7)科学者、技術者:理系の政治家も必要です。客観的、科学的なデータに基づき、冷徹に対象を洞察できる訓練を積んだ科学者は政治においても広い視野をもって判断を下すことができるでしょう。数学者などもいいかもしれません。物事をいろいろな角度から眺める訓練ができていますから。

8)実業家:一代で事業を興して成功させたという人は勿論ですが、大企業で上り詰めたという実業家も政治家として最適です。企業の運営も国家の運営も基本的には同じです。情報を収集し、状況を見定め、人を動かし、果敢に決断する。腹の据わった規格外くらいの人物がいいのですが、そういう人は『出る杭は打たれて』しまったのでしょうか。


2016/11/13追記

11月08日配信の週刊ポストがやっと『築地の水の方が豊洲の水よりずっと汚い』という記事を載せてくれました。

当たり前です。雨が降れば下水が溢れ、ネズミが出没し、生鮮食料品が日なたに置かれるような築地よりも、豊洲のほうがずっと清潔で安全でしょう。そのためにこそ、現場の技術者たちは頑張ってきたのです。

予定していた移転日を過ぎ、都への補償請求の話も出てきています。いずれ『委員会で検討した結果、豊洲の安全性に問題の無いことが分かった・・・』などの答申が出て、豊洲へ移転されることになるでしょうが、小池劇場の観客と一緒になって囃し立てた大手メディアの責任はどこにあるんのでしょうか。


2016/12/28追記

昨日の報道では、小池知事がオリンピックの費用負担を開催自治体に求め、各自治体の長が都庁に集まりそれを拒否したとのこと。

しかも、事前の根回しも何もなく要求して、公開の場で断られたということのようですね。

豊洲の問題もそうだったし、オリンピック会場の問題もそうでしたが、小池知事の言う『公開された、クリーンな政治』というのはそれかい!と呆れるばかりです。

公開されたクリーンな政治というのは、『全ての決断が、どういう理由に基づき、どうなされたかをきちんと記録に残し公開すること』であって、その決断の過程には、事前の根回しや、どろどろの駆け引きがあります。それが政治です。

大勢の報道陣を連れて宮城を訪れ、候補会場を視察するというパーフォーマンスを演じながらも、その陰で、根回しをして『落としどころ』を探っていなければならなかったのです。豊洲問題も会場問題も、結局、何の『落としどころ』も考えて無かったというのが明瞭になりました。単に、小池劇場のパーフォーマンスを演じただけで、何の解決にもなっていません。

劇場型政治で人気を得ることはできても、本当の政治はできません。主婦からの人気で選挙では勝てるかもしれません。しかし、その先にあるのはポピュリズムの衆愚政治であり、政治への不信になるでしょう。

こういう人が、国の外交をやりだすと危険です。ご本人も、福祉が得意で、外交が苦手と分かっているでしょうから、そこまでの心配は不要ですが、劇場型政治は外交には全く向きません。戦争への最も容易な道でしょう。

外交というのは、『敵の敵は味方』の世界です。本当は、『敵の敵も敵』なのですが、それを隠して自国に最も有利な条件を探すのです。味方同士でも、右手で握手しながら、左手で殴りあう必要があります。例えば、米国にとって日本は味方ですが、日本の敵である中国は日本を動かすための味方なのです。同様に、米国にとって敵であるロシアは、日本にとって、本当は敵なのですが、対米国に対しては味方といえます。

その意味で、先日のロシアとの会談は全く正しい。そもそも、北方の小さな島4個を返してもらって領土欲を満足させても、それだけの事です。ロシアに上手いことやったと思わせながら、長期的に日本のポジションを有利にさせるという最善の選択の糸口になるのではないでしょうか。