世界的な民主リベラルの敗北


トランプショックから1週間。やっとマスコミ業界も冷静さを取り戻して、今週号の週刊誌にはその分析と今後の予想の記事が出てきました。

dマガジン(無菌病室には紙の雑誌などを持ち込みたくないので、タブレットで全ての雑誌が 読めるのは本当に便利)で、ざっと読んでみました。それぞれタイトルは、

週プレ(11/14配信):トランプvs日本 ここが勝負だ
週刊現代(11/14配信):トランプが世界経済をぶっ壊す
週刊ポスト(11/15配信);トランプ大統領で本当によかった!
サンデー毎日(11/15配信):不安だらけのトランプ大統領
Newsweek日本版(11/15配信):ドナルド・トランプの世界
週刊朝日(11/15配信):トランプが安倍を潰す
週間新潮(11/17配信):トランプ大統領 25の疑問
週間文春(11/17配信):トランプ「裏の顔」


いずれも、これまでの選挙運動中のトランプ氏の発言を繰り返し、さあ、大統領になってどこまで本当にやるのかという論調にしか過ぎません。

特に酷いのは、週間朝日。曰く『官邸にも外務省にもトランプ氏との太いパイプがなく慌てている。トランプ大統領になると、東アジアの不安定化や経済失速を招き、安倍政権の寿命を縮める』などというもので、深みも何もなく全く的外れです。

週刊新潮は、10頁にわたる特集を組み、トランプ氏の過去の行動などから発言の裏にある真意に迫ろうとしており、また、週間文春は選挙運動中から、外務省が『ヒラリーで間違いありません』と言うところを、官邸がいかにトランプ氏とパイプを繋ごうとしていたかを克明に追い、トランプ氏側近との秘密会談を重ね、トランプ氏との直接電話会談を終えた安倍首相が『ウマがあうかもしれない』と述べたことなどの興味深い記事が載っています。

端的にいえば、今回の大統領選挙で本当に敗北したのは、米国の大手マスコミです。CNNやCBS、ニューヨークタイムスやワシントンポストをはじめとする米国の大手マスコミは少し左寄り、民主リベラルの傾向がありますが、これらのマスコミが米国民の気持ちと解離していたのです。『私達が世論をリードしますよ。政権もチェックしますよ』と米国民の気持ちを理解していると思って居たのに、米国民の気持ちは、『高給取りのインテリ達に何が分かる。俺たちの生活をどうにかしろ』だったのです。選挙戦を報じ、トランプ氏の暴言や下品さを嗤い、最後までクリントン氏が間違いなく勝つと考えていた米国大手マスコミは、完全に読み間違えたのです。

同時に、これら米国の大手マスコミよりも、さらに左寄り、民主リベラルな、日本の大手マスコミも敗北したのです。だからショックで正確な分析ができていないのです。

歴史のコンテクストをみれば、20世紀の壮大なイデオロギー実験であった社会主義が失敗し、ソ連が崩壊し、冷戦が終結して、米国は世界唯一のスーパーパワーとなりました。そして世界の警察官として、自らの『正義』である、民主主義を広めようとしました。もともと民主主義の素養があった東欧ではうまくいきました。しかし、リビアのカダフィ大佐を排したあたりから、おかしくなりました。その土地の歴史や国民性、文化などを考えない、『正義』の押しつけは混乱と腐敗を招きました。カダフィ大佐のもとでアフリカ随一の繁栄を謳歌していたリビアの姿は今はありません。

イラクでも同様のことが起こりました。『人道』や『人権』の問題があったにしろ、うまくイラクを治めていたフセイン大統領を排した結果、力の空白を招き、イスラム国の出現を招き、より酷い『人道』被害を招きました。その土地の状況や歴史を考えない、『民主主義』というイデオロギーが先行する政治は必ず失敗するのです。

『Yes! We can!』と大統領になったオバマ氏は、結局、何もできませんでした。『核兵器廃絶』と理想論を言ってノーベル賞をもらいましたが、自国の核戦略に変更はなく、一方で北朝鮮は核を着々と進化させました。イスラム国問題でも、またロシアのクリミア併合でも有効な手立てを打つことができませんでした。グローバリゼーションにより格差が広がり、米国の一部の金持ちはより豊かになりましたが、一般国民はより貧しくなりました。

世界はイデオロギーではなく、現実的に自国の利益を最大にし、自分たちの生活を良くする政治家を求めているのです。ロシアのプーチン氏はそれにより高い支持率を維持していますし、フィリピンのデュテルテ大統領もそういう政治家でしょう。知性的に話し合う政治家ではなく、右手でにこやかに握手をしながら、左手で殴り合うことができる大統領を米国も持ったということです。


さて、日本はどうすべきでしょうか。

まず、これまで東西冷戦、そしてそれに続く米国スーパーパワーのもとで、のん気に続けてきた『平和憲法厳守』などといった『お花畑理論』に基づく机上の空論を止め、本当に日本の平和を守るためにはどうするか、真剣に議論すべきです。必要な法整備、そしてやはり憲法改正が必要でしょう。平和憲法としての理想は前文あたりでいくら書いてもいいですが、我が手を縛るような条文は相手を利するだけです。

旧態依然たるイデオロギー先行型の大手マスコミの論調などで議論していたら、馬鹿にされるだけです。相手の弱みを十分に知った上で、本音でしゃべり、しかし商売人らしくギリギリの交渉をした上で、最後は互いに譲り合う。それによって本当の信頼関係が結ばれるのです。

そして政府としては、各国大使館の情報収集力を高め(大使館員にVIP待遇の仕事ばかりやらせるから劣化するのです)、必要ならスパイだって使って、正確な情報を送らせる。民主主義の限界で紹介した、ヴェネティア共和国の11人委員会のように、本当の外交方針は、少人数の秘密の委員会で決定する。『国民に分かり易くオープンな形で』と大手マスコミは叫ぶでしょうが、国際交渉方針をオープンにする国なんかありません。

ともかく、日本を元気にするための提言にも書いたように、『リアリズムに徹して国際紛争を回避する』のです。それ以外に日本の平和を守る方法はありません。徹底的なリアリストであるトランプ氏とは、きっと良い一致点を見出すことができるでしょう。