白血病に関するQ&A

Questions and Answers on Leukemia


 Q1: 白血病はどんな病気ですか?

白血病は血液のがんです。血液細胞には赤血球、血小板、白血球がありますが、これらの血液細胞が骨髄でつくられる過程で、がんになります。がん化した細胞(白血病細胞)は、骨髄内で増殖し、骨髄を占拠してしまいます。そのため、正常な血液細胞が減少し、貧血、免疫系のはたらきの低下、出血傾向、脾臓(血液を貯蔵しておく臓器)の肥大などの症状があらわれます。 日本では、1年間に人口10万人あたり、男性で10.6人、女性で7.4人の割合で白血病と診断されています(2010年のデータ*)。

白血病は、がん化した細胞のタイプから「骨髄性」と「リンパ性」に分けられ、さらに病気の進行パターンや症状から「急性」と「慢性」に分けられます。

白血病では、造血幹細胞から血液組織へと成熟する途中の細胞ががん化します。がん化した細胞がもし成熟したら何になっていたかによって、骨髄性かリンパ性かに分類されます。リンパ球になる予定の細胞ががん化した場合が、急性リンパ性白血病、そして、リンパ球以外の、白血球、赤血球、血小板になる予定だった細胞ががん化した場合が、急性骨髄性白血病です。

 Q2: 白血病の原因は何ですか?

白血病を含む「がん」は、一般に遺伝子や染色体に傷がつくことで発症すると考えられています。遺伝子異常が起きる原因としては、放射線被爆、ベンゼンやトルエンなどの化学物質、ストレスによる活性酸素、ウィルスなどが挙げられていますが、それらが原因と推察できる白血病はごく一部に限られ、白血病のほとんどは原因不明です。

白血病で判明している遺伝子異常は多いのですが、共通で決定的な原因となる遺伝子異常は明らかではありません。

白血病を含めて「がん」は、遺伝子に何らかの異常が起こり、がん遺伝子の発現とがん抑制遺伝子の異常・抑制などいくつかの段階を踏んでがん化すると考えられいて、一段階の遺伝子異常だけでは起こらず、何段階かの遺伝子異常が積み重なってがん化するのでしょう。

人には毎日、5000個のがん細胞ができているそうです。それでも大丈夫なのは、キラーT細胞やナチュラル・キラー(NK)細胞のような免疫系が正常細胞との表面抗原の違いを認識して、ががん細胞を破壊しているからで、NK細胞の活性が高い人は、がんにならないし、ウィルス感染もないと言われています。でも、加齢やストレスでNK細胞が減少したり、その力が弱くなると、がんになるのでしょう。

私の場合、仕事で放射線を扱っているということがあって、放射線被曝によって白血病になったのではないかと、私の親戚筋は疑っている気配があるのですが、放射線被曝はきちんと管理されているので、むしろ病院などで大量の被爆をする一般の人よりも少ないでしょうし、また、被爆量から推定されるリスクは、喫煙やストレスなどのリスクと比べてはるかに小さいものです。それよりも、仕事のストレスや年齢のせいで免疫系が弱っていたのかなと思っています。

例外的に2種類だけ、ウィルスが関わっていると分かっているものがあります。ひとつは、成人T細胞白血病で、エイズウィルスに似たHTLVウィルスの感染が原因であると分かっています。極めて感染力が弱く潜伏期間の長いウィルスで、エイズウィルスと同様に感染していても発病しない場合が多いのですが、日本人に成人T細胞白血病が多い原因になっています。私は、竹内久美子氏著「パラサイト日本人論」を読んで知ったのですが、沖縄、九州、南四国、熊野、東北の三陸、秋田、北海道、隠岐などの離島にキャリアが多いそうです。アイヌ民族では45%という世界最高のキャリア率で、日本の縄文人のルーツに由来するものだとのこと。白血病の発症で、日本人のルーツが分かるというのは大変に面白いと思いました。

 Q3: 白血病の初期症状や自覚症状には何がありますか?

白血病の症状は、急性白血病と慢性白血病では大きく違います。

急性白血病の症状としては、骨髄で白血病細胞が異常増加して正常な造血が阻害されるために、白血球の減少に伴う細菌などの感染症(発熱)や、赤血球減少に伴う息切れ、動悸、倦怠感、顔面蒼白などの貧血症状があります。また、血小板減少に伴う出血現象(鼻血、皮下出血)などがみられます。これらの症状は急性骨髄性白血病の方が急性リンパ性白血病よりも著明です。

私の場合には、鼻血が出て止まりにくくなったこと、ちょっと軽い運動をしても息切れや動悸が激しくなったこと、口内炎ができて口の中に違和感があったこと、が自覚症状でした。

慢性骨髄性白血病では、しばらくは慢性期と呼ばれる状態が続き、特に症状が現れず健康診断などで白血球数の異常が指摘されて初めて受診する場合が多いようです。自覚症状が現れる場合には、脾腫による腹部膨満や微熱、倦怠感があります。慢性骨髄性白血病を放置しておくと、数年の後、移行期と呼ばれる芽球増加の中間段階を経て急性転化を起こし、芽球が急激に増加して急性白血病と同様の状態になります。慢性骨髄性白血病が急性転化した場合には、それまで使用していた抗がん剤が全く効かなくなり、約90%の患者が3〜6か月以内に死亡するようです。従って、慢性白血病は慢性の内に治療することが非常に重要です。

慢性リンパ性白血病では一般に進行が遅く、無症状のことも多く、健康診断で白血球増加を指摘されるケースが多いのですが、リンパ節の膨張に気付いて受診することもあるようです。リンパ節の腫れ以外では、倦怠感、腹部膨満、寝汗、発熱、皮膚の病変などがみられます。

 Q4: 白血病の診断はどうするのですか?

白血病の検査では、血液検査と骨髄検査が主になります。

血液検査で白血球数の異常や赤血球数や血小板の減少が見つかれば、白血病の疑いがあります。

診断を確定するためには、骨髄検査が必要です。皮膚と骨の表面を局所麻酔してから、骨の中に太い針を刺して骨髄血を吸引する「骨髄穿刺」や、同様にしてから太い針で骨組織を含む造血組織を採取する「骨髄生検」を行います。採取して、薄く延ばした標本を色素で染色後に顕微鏡で検査して診断します。

また、白血病細胞の中枢神経への浸潤の可能性や、脾・肝臓腫、感染症などの白血病の症状を探るために、CT検査や脳脊髄液検査、細胞培養検査なども行われます。

私の場合には、血液検査で白血球が5万を越え、血液の凝固・線溶を示すFDP値が高く、まず播種性血管内凝固症(DIC)と診断され、その原因として、骨髄生検の結果、骨髄中のがん細胞が90%を越えていたので、急性骨髄性白血病と診断されました。骨髄の繊維化が進んでいて、骨髄穿刺では血液を採取できず、生検用の太い針に変えて組織の採取がありました。(痛かったよ〜)。

また、最初の病院でも、また転院先の病院でも、内臓のCT検査がありました。幸い、脾臓、肝臓、腎臓などの異常(肥大)は見られなかったようで、このおかげで抗がん剤治療が無事に進んでいるのだと思っています。ガンマGTPなんかの血液検査の指数は悪かったのですが、それは直前までの飲酒や暴飲暴食、肥満などの不健康な習慣のせいだったのでしょう

私の場合には、更に、心臓疾患を気にされました。自覚症状は無かったのですが、不整脈がひどくて、寛解治療で用いるイダマイシン(抗がん性抗生物質でDNAに働くタイプのもの)は、心臓への副作用があるので気にしていたのだと思います。心電図を3日間取り付けられ、また、循環器系の病棟に行って、心臓のエコー検査などを時間をかけてやりました。結局は、まあ、大丈夫ですね、という所に落ち着いたようです。

なお、白血病の治療では、まず、抗がん剤を使って骨髄中のがん細胞をゼロにする、寛解治療を行いますが、骨髄中の芽球が5%以下になったときに、完全寛解(かんぜんかんかい)の状態としています。本当は、白血病芽球が1個でもみつかれば白血病が治っていたいのですが、白血病の芽球と正常の芽球を細胞の形態だけで鑑別することは容易ではないので、芽球が5%かどうかを基準にしている訳です。

しかしながら、最近では遺伝子診断ができるようになりましたので、10万個の正常細胞の中に白血病細胞が1個でも混在していれば、これを見つけることができます。ただし、遺伝子診断は高価な診断法ですので、通常は顕微鏡検査で診断します。

 Q5: 白血病は治りますか?

白血病は以前は不治の病として治療ができない病の代表的な存在でしたが、現在では抗がん剤を用いた化学療法や造血幹細胞移植の進歩により、完治することも可能ながんとなっています。

とはいえ、急性白血病全体の5年生存率は、約40%です。また、年齢により、生存率は大きく変わっていて、若いほど生存率が高く、70才以上では、治療よりも生活の質(Quality of Life)を落とさない治療が中心になります。

詳しくは、日本成人白血病治療共同研究グループ:JALSGの治療実績のページに、白血病のタイプや、どういう治療法をとったかにより、また、年齢など違いによる、死亡率の統計が出ています。

完治する可能性はあり、『白血病は治る病気だ』と言っていいと思いますが、再発の可能性も高く、なかなか厳しい面もあります。

 Q6: 白血病って不治の病というイメージがあるのですが

白血病の発症率は、2009年の統計では年間人口10万人当り 6.3人(男7.8人 、女4.9人)で、年間約7,900名が死亡しています。がん全体の中では比較的少ないのですが、不治の病という鮮烈なイメージがあるのは若い人がかかる場合が多いからだと思います。

多くのがんは高齢者がかかり、子供や若い人では極めて希なのに対し、白血病は、子供から高齢者まで広く発症するため、子供や若い人に限れば、がんの中でも比較的に多いがんになります。青年層の死因としては、事故死に次いで第二位を占めています。

また、1970年頃までは有効な治療法がなく、急性白血病で数週間から数ヶ月、慢性白血病でも数ヶ月から数年で間違いなく死亡する不治の病でした。1980年代以降、化学療法や、骨髄移植(Bone Marrow Transplantation; BMT)、末梢血造血幹細胞移植(Peripheral Blood Stem Cell Transplantation; PBSCT)、臍帯血移植(Cord Blood Transplantation; CBT)の進歩に伴って治療成績は改善されつつありますが、いまなお、 子供や若年層での病死因の中で高い割合を占めています。

小説などでは、昔は悲劇の主人公の死因は結核でしたが、それに代わって、主人公が白血病で亡くなることが多くなっています、それもあって、白血病は不治の病というイメージをもたれているのではないでしょうか。

私の娘が、私が白血病だと聞いた時に、『えっ、パパみたいに元気な人が白血病になるの?若く可憐な女性が白血病になるんだと思ってた』と言いました。小説のイメージなんでしょうね。

 Q7: 白血病は日本人に多いのですか?

世界全体の白血病の罹患率をみると、世界平均では10万人あたり年間2.5-3人といわれており、日本よりも低くなっています。

ただし、高齢者ほど罹患率が高いので、高齢人口が高くなると罹患率も高くなります。実際に、日本でも高齢化により、罹患率は近年高くなっていて、日本でも1997年の統計では全白血病の発症率は年間に男性で10万人あたり7人、女性で10万人あたり4.8人、合計で年間に人口10万人あたり約6人というデータもあります。

慢性リンパ性白血病は欧米では急性骨髄性白血病と並んで多い白血病ですが、アジアでは少なく、成人T細胞白血病はカリブ海諸国や、アフリカ中部大西洋沿岸諸国、および日本で高い傾向があるなど、民族や年齢、性別によって異なります。

成人T細胞白血病の原因とその分布は大変に面白いと思います。成人T細胞白血病は、エイズウィルスに似たHTLVウィルスの感染が原因であると分かっていて、そのウィルスに感染している民族(ウィルスのキャリアが多い民族)で罹患率が高くなっています。日本の中でも、沖縄、九州、南四国、熊野、東北の三陸、秋田、北海道、隠岐などの離島にHTLVウィルスのキャリアが多く、それらの地域の白血病罹患者が高くなっています。アイヌ民族では45%という世界最高のキャリア率で、それが縄文人のルーツだと、竹内久美子著『パラサイト日本人論』で読みました。縄文人に遅れて日本に入ってきた弥生人ではキャリアは少なく、京都や大阪などの日本の中央ベルト地帯で成人T細胞白血病が少ないのは、そのせいとのこと。実に、面白いと思います。

私のルーツは四国の愛媛で、大阪や京都、そして茨城県に行った時に、文化的な違和感を感じていました。それが、北の国に行ったとたん、『ああ、心が洗われるようだ』と故郷に帰ったような気持ちがしたのは、縄文人のこころだったのかもしれません。

 Q8: 白血病を治療しないとどのくらいで死にますか?

急性白血病の進行を抑えるためには、早期の診断と治療が不可欠です。放置しておくと、感染と戦える白血病の数が足りなくなり、感染症を引き起こします。また、赤血球の不足から重度の貧血に至ったり、血小板の不足により出血が起こります。

それらの原因により、無治療のままで経過をみると、急性白血病では数週間から2-3ヶ月で死亡します。

まったく無知だった私は、最初の病院で白血病と診断された時に、『じゃあ、どのタイミングで入院しましょう。来月に重要な会議があるので、その後でいいですか?』と聞いてしまい、医師に『10で死ぬとすると、あなたは9の段階だからね』と言われてしまいました。

 Q9: 白血病でどんな人が亡くなっていますか?

やはり、鮮烈な記憶を残しているのは、女優の夏目雅子(27才没)でしょう。また、歌手の本田美奈子(38才没)の早すぎる死も、白血病は可憐で綺麗な女性の病気というイメージを作っていると思います。

亡くなってはいませんが、俳優の渡辺謙。女優の吉井怜、TVキャスターだった大塚範一。

歌舞伎の市川団十郎(66才没)、新山志保(声優、29才没)、アンディ・フグ(空手家、35才没)。若く、元気な人も亡くなっています。

写真家の外山ひとみ(2013年9月急性骨髄性白血病で入院、2014年6月1日肺炎のため55才没。

TVの「ザ・鉄腕!DASH」のDASH村で、農作業を指導してきた福島県浪江町の三瓶明雄さんも、急性骨髄性白血病のために、2014年に84才で亡くなっているそうです。

 Q10: 白血病は転移しますか?

白血病というのは血液のがんですから、体中を巡っている血液の中にがん細胞があるので、最初から転移しているがんだと言うこともできます。しかし、他のがんの転移のイメージとは全く違いますので、『転移はない』と言えます。

白血病が他臓器を冒す場合には、転移ではなく『浸潤』と呼ばれます。

診断までの期間が遅れるほど、血液中の白血球数は増加し、脾腫、肝腫、リンパ節が腫大する臓器浸潤をみます。皮膚浸潤や歯肉腫脹や痔(肛門部の浸潤)なども見られます。また、正常の血球が減少するために、発熱、貧血や紫斑などの身体症状も顕著になります。白血病細胞が脳髄膜に浸潤して、頭痛などの髄膜刺激症状を呈することもあり、中枢神経系白血病とよばれます。急性リンパ性白血病に多く、完全寛解に到達したら、その時点では脳髄膜に白血病は見られなくても、放置しておけば、この部から再発してくることが多いため、抗がん薬を髄腔内に注入したり、頭蓋骨全体に放射線を当てて、中枢神経系白血病が発症しないように予防対策をすることが必要となります。

 Q11: 白血病は遺伝しますか?

白血病は遺伝性の病気ではなく、親から子に伝わることはありません。また、感染もありません。ただし、ウィルスが原因の成人T細胞白血病については、ウィルスによる感染が考えられますが、Q1に書いたように、成人T細胞白血病のウィルスは極めて感染力が弱いので、うつることは無いと断言して良いと思います。

 Q12: 白血病の具体的な症例を教えてください。

日本成人白血病治療共同研究グループ:JALSG (Japan Adult Leukemia Study Grougp)のの治療結果報告では、治療プロトコルを変えた場合の5年生存率の変化などの統計的なデータが示されていますが、その具体的な症例について、治療プロトコルで検索すると、いろいろな具体例が出てきます。

例えば、JALSG有害事象の報告 -AML97- は、治療プロトコルAML97で現れた症例です。

ただ、患者ご本人が、これらの症例を調べることはオススメしません。私も、調べていて暗い気分になり、『これは見ない方がいいな』と思いました。

それよりも、リンクのページにある、個人の体験記がいいと思います。大変な中、ポジティブに生きている方もいらっしゃって力づけられます。

ここでは、有名人の症例をみてみます。

夏目雅子:1985年2月14日、口内炎が出来、激しい頭痛等極度の体調不良を訴える。2月15日慶應義塾大学病院に緊急入院し、急性骨髄性白血病と診断される。順調に回復していたが、8月下旬から高熱を発する。抗がん剤の副作用等が原因とみられる肺炎を併発。9月8日に突然熱が一時的に引いたが、翌日から高熱を発して意識不明の重体になり、1985年9月11日、27歳で死去。

本田美奈子:2004年末頃から風邪に似た症状や微熱が続き、翌2005年1月12日、急性骨髄性白血病と診断を受けて緊急入院。 その後、2度に渡る化学療法を受けるも、寛解(癌細胞が十分に減った状態)は得られなかった。急性骨髄性白血病の中でも極めてまれな予後不良の治療抵抗性の白血病であったという。治療として骨髄移植が考慮されたものの、骨髄バンクでドナーが見つかるまでの猶予すらない病状であったことから、同年5月、臍帯血移植を受けた。同7月末には一時退院したが病気の再発が認められ、同年9月8日に再入院し、輸入新薬による抗癌剤治療を受けた。翌月には再度一時退院したが、同月末には再入院となった。その後肺への合併症から容態が急変し、同年11月6日死去。38歳没。

新山志保:1998年夏頃に急性白血病に倒れ闘病生活を送っていたが、2000年2月7日、内臓出血による血圧低下と肺炎との合併症のため、29歳で死去。

吉井怜:2000年、グラビア・カレンダーの撮影時に急性骨髄性白血病を発症。1回目の抗がん剤の投与で髪の毛が抜け落ち爪も黒くなった。抗がん剤の投与は4回行われ、退院まで5か月がかかった。医師は彼女に寛解維持療法と骨髄移植の2つの方法があり、母親とHLAが一致することから骨髄移植を勧めたが、彼女は芸能界復帰がかなわなくなることを恐れ寛解維持療法を選んだ。その後、兄の勧めで骨髄移植を受ける決意をした。2001年7月11日、母親からの骨髄提供により骨髄移植を受けた。移植後は移植片対宿主病(GVHD)も加わり、10日間ほどの記憶を無くしている。血液型がA型からO型に変わった。

渡辺謙:1989年急性骨髄性白血病を発症。約1年の闘病の後、治療を続けながらも俳優業に復帰。定期的に入院治療を続けながら活動。経過は良好に見えたが、発病から5年経過した1994年に再発し、再治療。白血病の治療中頻繁に受けた輸血(主に血小板輸血)が原因でC型肝炎ウィルスに感染したが、治療を終え、現在は急性骨髄性白血病・C型肝炎ウィルス感染ともに問題のない良好な状態を保っている。

大塚範一:2011年11月体調不良。急性リンパ性白血病と診断を受け入院。「元気過ぎる入院患者」「現在は半年かかる長期治療のおよそ3分の1が終わった状態で、強い副作用がなければ普段と変わらない生活を送れている」などのメッセージを寄せる。8月末に退院する予定だったが、後1ヶ月で退院という時に感染症や合併症を併発。2ヶ月間は命を失いかねない危険な状況だった。寛解と診断され、2012年10月1日に退院。しかし、本格復帰目前の2013年3月16日、白血病が再発したことが判明する。骨髄移植について、3人の姉は高齢のため骨髄提供は難しい状態(姉達は提供希望の意思)であったことや、大塚本人もこの時点で60代であったことなどから、移植手術を受けるには厳しいとされた。2013年9月、臍帯血移植手術を終えて退院。血液型A型の少女が血液対象者だったため、移植手術を受けて血液型がB型からA型に変わった。

 Q13: 血液の寿命はどれくらいですか?

造血幹細胞は分裂すると未成熟の赤血球、白血球、または血小板産生細胞になり、細胞分裂しながら成長し、成熟した赤血球、白血球、または血小板になります。赤血球、白血球、血小板の血中成分には寿命があり、白血球は数時間から数日、血小板は約10日、赤血球は約120日です。日々血球成分の生産と死滅を体内で繰り返し行なっており、骨髄は休むことなく血球成分を作っています。

また環境の変化にも適応する作用もあり酸素の量や赤血球の数が減少すると、腎臓からエリスロポエチンというホルモンが放出され骨髄を刺激して赤血球量が増えます。また体内で細菌の感染があればそれに反応して白血球を、出血があればそれに反応して血小板をつくって放出しています。


私たちの体内には、成人で4,000〜5,000mLの血液があり、ふつう男性は体重の約8%、女性は約7%程度といわれています。

抹消血液中の白血球数の正常値は、1マイクロリットル(1ccの1/1000)中、3500〜9800です。また、赤血球数の正常値は、成人男性で約500万個/μl、成人女性では約450万個/μlです。末梢血液の血小板の正常値は12万〜38万/μlです。


 Q21: 白血病の治療はどうやるのですか?

現在の白血病の治療の基本は、抗がん剤を用いた化学療法です。まず、抗がん剤により、血液中のがん細胞が減少し症状がなくなった状態(寛解)にします。骨髄中の芽球が5%以下になった状態を完全寛解と呼びますが、完全寛解になっても、がん細胞がゼロになった訳ではなく、そのままだと再発の可能性が高い状態です。そのため、寛解療法に続けて、地固め療法と呼ばれる抗がん剤治療を3-4回繰り返します。これにより、骨髄の奥の白血病細胞までやっつけて、再発の可能性を低くします。

寛解には、顕微鏡観察で白血病細胞が見つからない血液学的寛解と、顕微鏡観察により鋭敏な分子学的捜索で白血病細胞が見つからなくなった分子学的完全寛解があります。白血病細胞を1個でも残すと再発の可能性は否定できないので、急性白血病の治療では、白血病細胞をすべて殺す(Total kill)必要があると考えられています。

治療の結果、最も鋭敏な検査法でも白血病細胞が見つからない、分子学的完全寛解になっても白血病が再発することがあります。骨髄の奥深くで休眠状態の白血病幹細胞が抗がん剤に耐えて生き延びるためです。再発した白血病細胞は抗がん剤治療をくぐり抜けてきた細胞であるために非常に治療抵抗性が強く、通常量の抗がん剤療法や放射線でも効きにくいことがあります。そのため、再発した白血病や再発が予想される白血病では、骨髄移植や臍帯血移植などの、造血幹細胞移植が適用されます。

造血幹細胞移植では、致死量をはるかに超えた大量の抗がん剤と放射線によって白血病細胞を含めて病的細胞を一気に根こそぎ示すさせます(前処置)。このとき、正常な造血細胞も死滅するので、患者は造血能力を完全に失い、そのままでは確実に死亡します。そのため、HLA型の一致した健康人の正常な造血幹細胞を移植して、健康な造血システムを再建してやる必要があります。

しかし、通常の移植の前処置は、あまりに強力な治療であるため、体力の乏しい患者や高齢者は治療に耐えられません。そのため、ミニ移植という手段もあります。

なお、「抗がん剤だけはやめなさい」などの著作で知られる近藤誠氏によれば、『固形がんの中で、睾丸のがんと子宮絨毛のがんだけは、抗がん剤に延命効果どころか治す力まであるが、ほかのがんには、抗がん剤は効かない』。むしろ、正常な細胞を抗がん剤で破壊することによって症状が進み、死期を早めるというのが彼の主張ですが、その彼でも、『急性白血病や悪性リンパ腫などの血液のがんの多くは、抗がん剤が第一に選ばれるべき治療法で標準治療だといえます』と書いています。

 Q21: 白血病の治療中の副作用やリスク(死因)にはどんなものがありますか?

抗がん剤の副作用には、食欲不振、口腔や喉のヒリヒリ感、吐き気、便秘や下痢、脱毛、皮膚への影響などがあります。

抗がん剤で白血球数が下がって感染しやすくなり、血小板が少なくなって血が止まらなくなると大変です。私の隣の病室にいたおじいさんは、痔持ちだったのですが、痔が化膿して悪化し、出血しても血小板が少なくて血が止まらないという症状で、とても大変そうでした。

私の場合には、当初から、播種性血管内凝固症(DIC)があり、抗がん剤によって細胞が崩壊し、DIC がさらに悪化しました。体内での血液の凝固・線溶を示すFDP(Fiber Destruction Product)値が400を越え、担当医師に『この数値の人は半分は死んでいます』と言われて、消化器系での出血を防止するために、5日間、絶食になりました。

なお、抗がん剤の副作用は近年次第に減ってきています。吐き気止めなどの支持療法が進歩したこと、特定の分子だけを標的にする抗がん剤など、正常な細胞をできるだけ攻撃しないように工夫された薬が用いられるからです。

 Q22: 白血病の治療にどれくらいの期間がかかりますか?

急性白血病の標準治療では、寛解療法 → 地固め療法 → 寛解維持療法(強化療法)という3つの段階に分けた治療を行います。

寛解療法:まずは、骨髄中のがん化した白血球(白血球細胞)の数を、全白血球数の5%未満まで減らす(これを完全寛解と呼びます)ことを目指します。急性骨髄性白血病の寛解導入療法ではイダルビシン(イダマイシン)または,ダウノルビシン(ダウノマイシン)にシタラビンを併用する治療が標準治療となっています。この治療で、約80%の患者を完全寛解状態にすることができます。この時、嘔吐、脱毛、発熱、貧血、免疫力低下などの副作用が必ず出現しますので、これらの副作用を抑えるため、抗菌剤、抗ウィルス剤、輸血などの支持療法も並行して行います。

抗がん剤により、血液製造工場を白血球細胞ごと一旦完全爆撃しますので、血液製造工場が再生するまで時間がかかります。寛解療法(第1回目抗がん剤治療)に必要な時間は、その再生の時間に大きく依存し、年齢が若いほど早い傾向がありますが、人それぞれで、典型的には5週間です。私の場合も5週間でした。

地固め療法:完全寛解になっても、白血病細胞はまだ生き残っており、再発の可能性が高い状態です。そこで、寛解状態をおり確実にするために、抗がん剤により体内に残った白血病細胞を徹底的に根絶させます。寛解導入療法で使用した抗がん剤の他に、メトトレキサート、シダラビンといった抗がん剤を組み合わせて、数ヶ月にわたり定期的に投与します。

1回の地固め療法は、抗がん剤を投与して血液製造工場を白血球細胞ごと絨毯爆撃し、それが再生するのを待つので、寛解療法とほぼ同じ時間がかかりますが、抗がん剤投与の時間が5日間(寛解療法の時は7日間)と短いこともあって、典型的にはやや短めの4週間です。私の場合も4週間でした。体力回復のための時間(1週間程度)をはさんで、3-4回の地固め療法を繰り返します。従って、地固め療法に必要な期間は、4ヶ月程度になります。

寛解維持療法(強化療法):寛解療法と地固め療法で体内の白血病細胞がほぼ消失した状態になったら、寛解状態を長期間維持させるために、1-2年間は定期的に通院し、弱い抗がん剤を投与します。

ただ、近年の研究では、寛解維持療法を行った場合と、寛解維持療法を行わない代わりに地固め療法を集中的に行った場合の再発率の調査がなされ、集中的に地固め療法を行った方が再発率が低いという結果がでているようです。従って、標準治療としては、地固め療法を増やして、寛解維持療法を行わない方向になっているようです。

 Q23: 抗がん剤は毒なのですか?

『毒をもって毒を制す』なので、抗がん剤は強力な毒です。

抗がん剤治療を受けて驚いたのは、看護婦さんが完全武装で取り扱うこと。抗がん剤に『被爆』しないように、防護用眼鏡をしたり、手袋をします。『被爆』という言葉もすごいですね。

抗がん剤の投与中は、点滴の排泄の様子をみるために全ての尿が計量されるのですが、その計量を行う時にも看護婦さんは完全武装です。抗がん剤を投与された患者の尿にも抗がん剤の毒が出るからです。

尿や便にも出るくらいですから、男性の精液にも毒がでます。恋人の男性が抗がん剤治療を受けている時には、精液を受けたり飲んだりしてはいけません。まあ、エッチする元気があるかどうかは問題ですが。

 Q24: 白血病治療に使う抗がん剤の種類を教えてください

抗がん剤は、大きく、従来型の『殺細胞性抗悪性腫瘍薬』と、近年開発が進んでいる『分子標的薬』の2つに大別されます。現在、新たに開発されている抗がん剤の殆どは分子標的薬です。従来の殺細胞性抗悪性腫瘍薬は、がん細胞だけでなく、健康な細胞にまで働くため副作用が強かったのに対し、分子標的薬は、がん細胞が産出する特異な物質に狙いを定めた抗がん剤なので、正常な細胞に与えるダメージを少なくすることができます。

具体的には、分子標的薬は、細胞を構成する特定の分子、つまり各種タンパクに抱きついて、その分子の働きを妨げることにより治療目的を達しようという薬で、特定の分子にピッタリと隙間なく抱きつけるように薬の形状を設計して合成します。中でも最も成功したのは、慢性骨髄性白血病に対するイマチニブ、商品名グリベック)で、毒性が少なく、慢性骨髄性白血病の治療薬として理想的と考えられています。

従来型の『殺細胞性抗悪性腫瘍薬』は、細胞の分裂を阻害する抗がん剤であって、どのように阻害するかによって、いくつかの種類に分けられます。

・抗がん性抗生物質
抗がん作用をもつ抗生物質です。がん細胞のDNAの中に入り込んだり、DNA合成に必要な酵素を阻害することで、正常なコピーができないようにします。

・代謝拮抗薬
DNAの合成に必要な塩基や葉酸に似た物質から作られた薬です。本物の塩基や葉酸と間違えて取り込ませることで、がん細胞の正常な分裂を阻害します。どの物質に似せるかによって、さらに3種類に分かれます。

・アルキル化薬
DNAの塩基にアルキル基と呼ばれる原子団を結合させることによって、正常なコピーができないようにする抗がん剤です。細胞周期に関係なく効果を発揮します。

・白金製剤
白金から作られた抗がん剤です。DNAを構成するプリン塩基に結合することで、がん細胞の正常なコピーを阻害します。

・トポイソメラーゼ阻害薬
DNAの合成に関わるトポイソメラーゼという酵素を阻害する抗がん剤です。DNAの情報をコピーする際には、トポイソメラーゼの働きによって二重らせん構造をいったんほどく必要があるのですが、それを薬で抑えることによってがん細胞は正常なコピーができなくなります。

さて、具体的に、急性骨髄性白血病の標準的な寛解治療に用いられる抗がん剤は、アントラサイクリン系薬剤とシダラビンが基本です。アントラサイクリン系というのは、ストレプトマイセス属微生物に由来する抗がん性抗生物質の一群で、これまで開発された中でも非常に効果的な抗がん剤であり、白血病のほか、乳がん、子宮がん、肺がんなど多くの種類のがんに対して有効です。主な副作用は心毒性であり、このため有用性がかなり制限されています。

もっと具体的には、イダルビシン+シダラビン、またはダウノルビジンン+シダラビンの2剤併用が選択されます。イダルビジンは商品名がイダマイシン。ダウノルビジシンは商品名がダウノマイシン、いずれも、アントラサイクリン系で、上記分類の抗がん性抗生物質の仲間です。また、シダラビンは商品名がキロサイド、代謝拮抗剤の仲間です。

私の場合には、最初の抗がん剤治療(寛解治療)は7日間のコースで、最初の3日間、イダマイシン23mgを30分で、キロサイド195mgを23時間で投与。次の4日間はキロサイドのみ195mgを23時間で投与。吐き気止めのカイトリル1Aも毎日投与でした。イダマイシンは、抗がん性抗生物質なので短時間でも効果があり、キロサイドは代謝拮抗剤なので連続して投与する必要があるので、このようになっているのでしょう。

写真で、オレンジのやつが、抗がん性抗生物質のイルダビジン、商品名イダマイシン。見るからに強力そうです。

また、地固め治療(2回目、3回目、4回目の抗がん剤治療)は、それぞれ5日間のコースで、1日目、3日目、5日目の1日2回、代謝拮抗剤のシタラビン(キロサイド)4100mgを3時間で投与しました。


抗がん剤の種類と副作用については、抗がん剤の種類と副作用のページに、抗がん剤名、商品名ごとに詳しく出ています。

 Q25: 骨髄移植ってどうやるのですか?

急性骨髄性白血病(AML)の治療法として、化学療法のほかに、造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植)があります。

造血幹細胞移植は、白血病細胞だけではなく正常な血液細胞も併せて死滅させる程の強力な抗がん剤や放射線治療を最大限行って、その後に、健康な提供者あるいは自身の骨髄から白血病細胞を除いた幹細胞を移植して正常な血液細胞を補充するものです。

自分以外の血縁者や非血縁者から移植をすると、提供者由来の白血球が患者の体に残る白血病細胞をやっつける免疫反応を持つことがわかってきました。このため、造血幹細胞移植は、抗がん剤や放射線だけではなく移植後に起こる免疫反応の力も使って白血病細胞を死滅させる治療であると考えることもできます。

造血幹細胞移植で用いる幹細胞には、骨髄、末梢血幹細胞、さい帯血があります。ドナーとなる人のは、血縁者(兄弟、親、子ども)が適合の可能性が高いのですが、非血縁者から骨髄あるいは末梢血幹細胞の提供を受けたい場合には、「日本骨髄バンク」が仲介してくれます。また、非血縁者からさい帯血の提供を受けたい場合には、「日本さい帯血バンクネットワーク」に問い合わせ、全国のさい帯血バンクに保存されている中から適合するものを探すことになります。

造血幹細胞移植では、抗がん剤や放射線の治療を受けたあと、点滴のチューブから幹細胞が移植されます。そして、幹細胞が患者の体の中になじむように、患者には免疫抑制剤が点滴または飲み薬で投与されます。うまくいけば、移植後2〜3週間でドナーさんの血液細胞が増えてきます。

造血幹細胞移植においても、化学療法の際に生じたものと同様の副作用や合併症が生じます。ただし、抗がん剤の量が多いため、副作用はより強く、合併症もより長く生じます。輸血などの回数もかなり多くなります。そして、化学療法では生じない、造血幹細胞移植に特異的な合併症である移植片対宿主病(Graft versus Host Disease:GVHD)が多くの患者さんで発症します。

GVHDは、ドナーの細胞が患者自身を攻撃するもので、急性GVHDは、皮膚、肝臓そして腸に主に現れます。軽微な症状で治療を要さない場合から、重い症状が出て治療としても致死的な状態になる場合まで症状の重さは様々です。慢性GVHDは、皮膚や関節が硬くなったり、口の粘膜が荒れたりする症状で、膠原病の症状とよく似ています。数か月から数年の治療が必要となる場合があり、患者の生活の質(Quality of Life)が低下します。

 Q26: 再生医療で治りますか?

再生医療とは、損傷した細胞に新たな細胞を移植し、本来の活動を取り戻させることをいいます。広い意味では肝臓や腎臓の移植、白血病治療のための骨髄移植なども、再生医療といえます。

通常、これらの手術にはドナーが必要で、白血病治療の骨髄移植にもHLA(ヒト白血球型抗原:Human Leukocyte Antigen)が適合するドナーが必要です。自分自身の造血幹細胞を移植する自家移植療法もありますが、あくまで正常な造血幹細胞をとっておいてそれを使います。

ところが“次世代型再生医療”では、臓器や細胞の提供をともなわずに、ヒトの万能細胞(iPS細胞)を用いて人工培養した臓器や細胞を移植することが可能となります。万能細胞は、体内のどんなパーツにも変化できるので、自分の皮膚から採取した細胞を培養してシートを作ってヤケドした部分に貼ったり、心筋や神経も作れます。

次世代型再生医療は、単純な構造をもつ細胞から始まるでしょうから、心臓疾患や神経疾患、白血病などが真っ先に適用になるのではないでしょうか。そして、いずれは腎臓などの複雑な臓器にまで適用されるのでしょう。白血病の場合には、iPS細胞から作った造血幹細胞を移植することが可能となるでしょう。

今年(2016年)の1月の新聞記事には、がん細胞への攻撃力が高い免疫細胞を、白血病患者自身のiPS細胞から作り、患者の体に戻す研究を、京都大などのチームが新年度から本格的に開始するという報道がありました。iPS細胞から作った免疫細胞でがんを治療した臨床例はまだありませんが、チームは動物実験などで効果が確認できれば、患者の体内に免疫細胞を入れ、安全性や有効性を検証する臨床試験(治験)を2019年にも始めたいとしています。

iPS細胞から作るのは、「キラーT細胞」と呼ばれる免疫細胞の一種。がん細胞やウイルスなどの「敵」を攻撃し、細胞表面にある分子の違いで攻撃相手を見分けます。キラーT細胞を使ったがんの治療法は国内外で研究されていますが、細胞ごとに攻撃する相手が異なるほか、培養して増やすのが難しいなどの課題がありました。京大チームは、キラーT細胞をiPS細胞に変えても、元のキラーT細胞が持っていた攻撃する相手の記憶は残る点に着目し。特定のがん細胞を攻撃するキラーT細胞を、無限に増殖できるiPS細胞に変化させて大量に増やし、患者の体に戻せば、がん細胞を効果的に攻撃できると考えています。

2019年の治験開始ですから、私の白血病も5年頑張れば、この治療を受けられるかもしれません。

 Q27: 移植や再生治療よりも新しい治療法ってあるの?

海外では、さらに進んで、免疫細胞の遺伝子を編集する白血病の治療が開発されています。例えば、2014年にベンチャー企業として創業した、米国のインテリア・セラピューティス社は白血病の治療に同社の持つ遺伝子編集(ゲノム編集)の技術を適用しようとしています。白血病では、ガン細胞を攻撃するはずの免疫細胞の働きも低下し、ガン細胞が増殖します。最近の研究では、免疫細胞に、ある遺伝子を加えると働きが強くなり、ガン細胞の増殖を止める効果があることが分かってきました。そこで、同社では、身体の中から免疫細胞を取りだし、そしてターゲットとする場所にゲノム編集で切り込みをいれ、外から遺伝子をつけ加えて、強力にした免疫細胞を大量に作り出し、身体の中に戻そうとしています。

一方、米国を中心に、ゲノム(全遺伝子)解析による診断・個別化治療が進んでいます。アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子診断により乳がんになる可能性が高いということで、まだ乳がんになっていないにも関わらず、乳房の切除手術をしたのは記憶に新しいところです。

治療においても、Precision Medicine(プレシジョン・メディシン:精密治療)と呼ばれる、ゲノムを基に個々の患者の性質に合わせて治療を行う、個別化治療が進んでいます。例えば、多くの人に効果のある薬が、遺伝子の型をもつ一部の人にとっては、むしろガンの増殖を助けることが分かっています。無駄な投薬をおさえ、その人に本当に効果のある治療のみを行うという方向です。

白血病の原因についてQ2では、『白血病で判明している遺伝子異常は多いが、共通で決定的な原因となる遺伝子異常は明らかではない』と書きましたが、遺伝子解析が進めば、いずれは、遺伝子レベルでがん化のメカニズムが明瞭になるでしょう。その時には、そのメカニズムにあった、また、個々の患者にあわせた治療が可能になるのではないでしょうか。

 Q28: 近親者の骨髄適合の確率はいくらですか?

血液型のA,B,O,AB型というのは赤血球の血液型で、輸血の際にはこの血液型を一致させる必要があります。同様に、白血球をはじめとする全身の細胞には、ヒト白血球抗原HLA(Human Leucocyte Antigen)と呼ばれる型があり、造血幹細胞移植では、HLA型が一致することが重要です。

HLA型には、A座、B座、C座、DR座という4座(8抗原)があり、両親から半分ずつ受け継ぐため、兄弟姉妹の間ではHLA型が完全に合ったドナーが1/4の確率で見つかります。非血縁者間では、数百から数万分の1の確率でしか一致しません。日本人は島国で混血した単一民族に近いので、外国と比べて、この確率は高いようですが、約30万人のドナー登録者の中でも一致するドナーを見つけるのは容易ではないのです。

上の図は、造血幹細胞移植情報サービスに載っている説明図ですが、詳しい説明も同ページに載っています。

さて、兄弟姉妹が4人いる場合の確率を考えてみましょう。4人いるから、それぞれが1/4で、誰か1人でも適合する確率は、1/4 x 4 = 1という訳ではありません。確率の試験問題になりそうですね。

4人のうち、誰か一人でも適合する確率は、1から、4人みんなが不適合になる確率を引いたものになります。つまり、1-(3/4)^4=0.68 です。同様に、

2人の場合は、0.44
3人の場合は、0.58
.....
10人の場合は、0.94

になります。

 Q29: 白血病で手術はしますか?

化学療法は点滴による治療ですし、骨髄移植の場合も、薬と放射線で骨髄を死滅させてから移植する幹細胞を点滴のチューブから流し込むので、いわゆる『きったはった』の手術はしません。

ただ、移植の場合に、問題となりそうな腫瘍などがあった場合には事前に除去する手術がありますし、肺炎などの合併症を併発した場合には、それに対応する手術が必要となる場合もあるかもしれません。

 Q30: 骨髄穿刺って痛いですか?

通常、背中から針を刺して、腰骨の骨髄から血液を採取しますが、『背中から骨に針を刺す』という状況が『怖く、痛い』というイメージを生んでいるのだと思います。

実際には、針を刺す周辺と骨に部分麻酔をしますから、麻酔の注射をする時にチクッとするだけで、骨髄穿刺の針を刺す時の痛みはありません。痛いと感じる場合には、医師に言えば、更に麻酔をしてくれます。

ただ、痛くなくても、神経を張り詰めていると、針が骨に当たるのや骨の中に入っていくのを感じることができます。ちゃんと神経はあるんですね。

あと、血液を採取するときに、ポンプで引かれる痛みが少しあるということで、『少し痛みますよ、1.2.3』と医師が言うのですが、私の場合には、うまく血液が採取できないようで、採血の痛みは全く感じませんでした。

詳しくは、痛くない骨髄穿刺の受け方を参照してください。

 Q31: 骨髄移植が必要な友人のために骨髄適合検査をしたいのですが

血縁が無い場合、骨髄適合の可能性は百万分の1と言われています。残念ですが、友人のために受けるのは意味が無いと思います。

ただ、ドナー登録するのは大変に意味があります。友人もドナー登録した人の中から、適合者を見つけることができるでしょう。

 Q32: 骨髄適合検査は骨髄から血を採るのですか?

どこかで誤解があるようで、私の兄や姉も、骨髄からの採血だと思って、覚悟して検査に出向きました。

私の主治医は『10ccくらいの採血ですから』と言っていたので、私は健康診断と同様に腕からの採血と思っていました。

実際には、口を開けて、口内の粘膜をとっただけでした。最近は、それで十分にHLA型が分かるのだとのこと。覚悟して病院に出向いた兄や姉は、気が抜けたそうです。

 Q40: 無菌病室の管理について教えてください

1970年代に、厳密な無菌管理のもとで造血幹細胞移植が開始されて以来、HEPA(High Efficiency Particle Air) フィルターを持ち、滅菌管理された無菌病室(クリーンルーム)が全国の白血病の病院に設置されました。当初は、管理徹底のために、厳重な出入り管理を行い、面会はガラス越しにインターホンで行うなどの完全な無菌化を目指しました。

ところが、その後、徹底した無菌管理は効果が無く、必要も無いという論文が相次ぎ、欧米では、無菌管理を簡略化して、そのリソースをもっと重要な対策に使う動きが出ました。日本でもそれを受けて、無菌管理の簡略化が図られるようになりました。患者の立場からも、生活の質(Quality of Life)という観点から、簡略化が望まれました。

これらを背景に、日本造血細胞移植学会では、2000年10月に造血幹細胞移植後早期の感染管理に関するガイドラインを定め、さらに、2012年2月に造血幹細胞移植後早期の感染管理に関するガイドライン 第2版が定められています。

第2版(改訂版)が出た背景のひとつとして、『現在も個々の医師の考えによって不必要な感染管理がなされている施設が学会発表等から散見され、新規の移植施設の増加、移植チームの世代交代等がその理由として考えられる。』と書かれています。

真面目な日本人だから、つい、管理を徹底してしまうんでしょうね。

『安易に簡略化を進めるというものではなく、個々のスタッフ、患者、患者家族が感染に対して認識を高くもつことで、ある程度の簡略化と、そして今まで以上の感染予防が可能であることが大前提』と書かれていても、日本人はどうしても形から入ってしまいますから。

私の最初の病院では、面会者はガウンをまとい、靴カバーをして、マスクをして、頭の先からつま先までカバーすることが義務づけられていました。また、食事も、生野菜など全く無しの煮沸調理したものばかりでした。12月から5月のインフルエンザの季節には、家族であっても面会謝絶でした。インタホンの設備が無いので、妻との会話を確保するために、インターネットを使った無料電話(スカイプ)を試したくらいです。一方で、私でもいかがなものかと思う杜撰な管理もあり、統一がとれていない印象でした。

この点、転院先の病院は、さすがに日本のがん治療をリードする病院だけあって、管理が実にスマートで妥当です。無駄な履き替えやガウンの着用などはなく、無菌病室での面会も2親等までの家族に許されています。食事も生野菜にドレッシング、皮付きの果物が平気で出てきます。聞くと、ちゃんと調理室で管理しているから大丈夫とのこと。

面会を2親等までの家族に限っているのは、2親等までの家族であれば、感染防止のための注意事項を守ってくれるだろうと信頼されているのでしょう。また、物の持ち込みは自由なのですが、患者本人が感染に対して認識を高くもっているという前提があるのだと思います。

 Q41: 無菌病室ってどうなっているの?

無菌病室のひみつ ベッドアイソレーターを参照してください。

 Q42: 無菌病室に入っている患者に面会できますか?

病院によると思いますが、一昔前のような厳重な管理ではなく、注意をすれば面会もOKという管理に変わってきています。これは、厳重な管理をしても感染率の低下に効果がないという事が分かり、むしろ患者の生活の質を保つ方が重要と考えられているからです。

ただし、あくまで患者本人や面会者が注意を払うということが基本で、さすがにバイ菌を撒き散らすような子供の面会は認められていませんし、親族以外の不特定多数の人の面会は制限されています。

また、ガウンなどのカバーの効果はあまり無いということですが、手洗いは効果があるようです。無菌病棟や病室に入る時には、きちんと手洗いとアルコール消毒をするとか、無菌病室でべたべたと物に触らないとか、体調不良で原因が分からない時には面会に行かないなどの注意が必要と思います。

現在の病院は、2012年に出された、造血幹細胞移植後早期の感染管理に関するガイドライン 第2版に基づいて、管理されています。 本ホームページの、無菌病室での面会についてを参照してください。

また、タイミングについては、面会のベストタイミングはいつ?が参考になると思います。

 Q43: 無菌病室に本を持ち込むことはできますか?

私の入院した病院では、自由に持ち込み可能です。

ただし、感染予防については、患者本人の注意に任せているのだと思います。患者側としても、古くてカビの生えそうな本は怖くて持ち込む気になりません。私の場合は、本はタブレットにダウンロードして読み、電子化されていない本については、新しく購入した本を最低限の数だけ持ち込みました。

病院によっては、本の持ち込みを禁止としたり、滅菌室で滅菌してからという所もあるかもしれません。医師や病院へ問い合わせてください。ただ、禁止の場合は、Q40で書いた『個々の医師の考えによって不必要な感染管理がなされている』ケースだと思います。

 Q44: 無菌病室で携帯電話やパソコンは使えますか?

以前は、病院内ではPHSのみで、携帯電話はダメという病院が多かったと思いますが、今は、問題なく使えます。

2014年8月19日に電波環境協議会が公表した、『医療機関における携帯電話等の使用に関する指針』で、医用電気機器の1m以内でなければ使用可能という指針が出ています。これにより、1997年に不要電波問題対策協議会(電波環境協議会の旧称)が公表した『医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針』は廃止となった訳です。

これまで医療機関では、携帯電話の電波により医療機器が誤作動を起こす可能性があるとして、その使用を禁止するケースもありました。しかし、新たな指針では基本的に、携帯電話の使用は可能となっています。

ただ、未だに、病院によると『携帯電話の使用はここでお願いします』というような表示があり、病院内では電源を切り、使う場合には限定した場所のみというケースもあります。新しい指針に対応できていない病院なんでしょうね。

携帯電話がOKということは、当然ながら、パソコンの使用もOKです。

具体的には、無菌病室のひみつ インターネット環境を参照してください。

 Q45: 食べ物の差し入れはできますか?

クリーンルームでの病院食以外の食事上の留意点をまとめた、以下の表が参考になると思います。

無菌室での食事

 Q46: お見舞いの品でダメなものはありますか?

生花やぬいぐるみなど、菌が繁殖しやすいものは、無菌病室への持ち込みは止めた方がいいです。また、食べ物については、クリーンルームでの病院食以外の食事上の留意点をまとめた、無菌室での食事に載せておいた表が参考になると思います。

以前は、持ち込み厳禁、食べ物も病院で煮沸調理したもの以外はダメなどという厳しい管理がされていたようですが、無菌管理の簡略化に伴って、制限は緩くなっています。

私の経験でも、最初の病院での管理よりも転院先の病院の方が緩い管理になっており、持ち込み品のチェックは実際上は患者自身に任せている状態です。もちろん、病院により、ガイドラインは異なるでしょうから、病院に確認された方がいいかと思います。

食べ物については、無菌室での食事をご参考ください。

 Q47: 無菌病室に入っているのに肺炎と敗血症を併発しました。院内感染ですか?

 Q48: 無菌病室って意味ないと聞いたのですが。

 Q60: 白血病の治療費用はどのくらいですか?

急性骨髄性白血病の標準治療では、全てが順調にいったとして、寛解を目指す1回目の抗がん剤治療(5週間〜)に続いて、地固めのための3-4回の抗がん剤治療(各4週間〜)が行われます。おおざっぱに言えば、1回の抗がん剤治療の治療費は約100万円、従って、計4-5回の抗がん剤治療で、約400-500万円かかります。

ただ、白血病治療において、抗がん剤を使用する化学療法は保険の対象となります。また、無菌病室は個室で設備も整っていますが、抗がん剤治療に必要な部屋ですから保険適用になります。健康保険の本人負担を3割とすると、1回の抗がん剤治療に窓口で支払う金額は、100万円の3割の30万円です。

そして、1ヶ月間に病院に支払う医療費が一定額(自己負担限度額といいます)を超えた場合には、超過分には「高額療養費制度」が適用されます。これは、高額な医療費の一部を公費でまかなう健康保険制度のひとつです。自己負担限度額は、収入や年齢によって分類されていて、平成27年1月診療分からは、区分ア)〜区分オ)まで5段階になっています。高額所得者でなければ、区分ウ)あたりで、約10万円です。

1回の抗がん剤治療にかかる期間は約1ヶ月ですから、1ヶ月ごとに窓口で30万円を払ったとして、1ヶ月の自己負担限度額の10万円との差額の30-10=20万円は、あとで健康保険組合から返還があります。

差額ベッドなどの保険の対象とならない費用は当然ながら自己負担です。私の場合、無菌病室に空きが無いと言われ、白血球が1000以下になるギリギリまで通常の個室病室にいることが多かったのですが、その差額ベッド代(18000円/日)は自己負担でした。また、兄や姉に受けて貰った骨髄適合検査(HLA検査)の6万円も保険適用外でした。

慢性骨髄性白血病の場合は、がん細胞だけを選択的に攻撃する分子標的薬グリペック(一般名イマチニブ)などの登場で、生存率が飛躍的に伸びた訳ですが、その薬価は、1錠が3000円ちょっと。1日に4錠服用するので、1日1.2万円。1ヶ月では35万円くらいになります。3割負担で、窓口で10万円を払い、自己負担限度額を8万円とすると2万円はあとで返還されますが、1年では、8万円x12ヶ月で100万円が薬代に必要です。この薬の効果は寛解であって、完治することは希なので、この薬を生涯服用する必要があります。

この高価な薬価による慢性骨髄性白血病患者の負担の大きさは問題になっていて、患者の会やその支援団体は、自己負担限度額の見直しを訴えています。当面は、1ヶ月毎に薬を貰うのではなく、3ヶ月まとめて貰うなどの対策を講じているようです。3ヶ月まとめれば、1度に100万円。3割負担で30万円。1ヶ月の自己負担限度額を8万円とすると、3ヶ月毎に8万円が負担額になり、1年では4回の計32万円に節約できる訳です。

 Q61: 骨髄移植の費用はどのくらいですか?

 Q62: 余命宣告を受けたけれど、セカンドオピニオンが欲しい

 Q63: 余命宣告を受けた父のために何かしたいのですが

 Q64: 



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