原発のリスクと日本のエネルギー選択

原発のリスクと日本のエネルギー選択

Risk of nuclar plants and selection of the energy in Japan


日本として最もリスクが少なく、環境に優しく、経済成長も可能な政策は

『古い設計の原子炉は廃炉にして、安全性に優れる新型の原子炉を新設し、それを基幹エネルギーとして、風力や太陽光などの再生エネルギーと組み合わせること』

だと思います。

まず、石炭火力はリスク評価で述べたように問題外です。「採掘のために死ぬのは日本人でないから気にしない」という人にも、中国からのPM2.5が飛んできて、大気汚染の問題や地球温暖化の問題はふりかかります。近年の異常気象による洪水や台風などの被害も、その遠因を辿れば、中国の石炭火力発電かもしれません。

ガス火力発電も、今後、重要な役割を果たす移行燃料ではあることは確かですが、地球温暖化の根本的な解決にはなりません。

シェールガスは、原油高騰化への対策にはなっても、地球温暖化の他に、以下のようなさまざまな環境問題が出ています。
2.採掘と同時に漏れ出すメタンガスによる爆発や健康リスク
3.大量の水の注入による水不足
4.地震発生リスク

再生可能エネルギーである太陽光。民主党政権がはじめた再生可能エネルギーの高価格の固定価格買取り制度のために、日本全国にソーラー発電施設ができましたが、今後、それらの維持のためのコストと、廃棄する際の環境汚染が心配です。

『新しい産業が生まれ、雇用を生み出す』とか、『コストはどんどん安くなる』などの夢を語る人々がいましたが、実際にそうなっているかどうかは現状をみれば明らかでしょう。同じ議論と経験は、すでにドイツで十分になされていて、ドイツにおいても補助金があるうちは、1999年創業の太陽電池メーカーのQセルズが2007、2008年に2年連続で太陽電池生産量世界一を日本から奪うなど景気の良かった時もありましたが、Qセルズは2012年に倒産しました。

現在、太陽電池が作られているのは中国です。2010年のシェアは、中国59%、欧州13%、日本9%です。現在はもっと中国のシェアが増えているでしょう。製造機械さえあれば非熟練の技術者でも製作できるので、中国の人件費が安いということがシェアを奪った原因ですが、それ以上に環境破壊を気にしない中国だからこそ、安く製造できるという事があると思います。

太陽電池の製作時には、四塩化炭素をはじめ、さまざまな化学物質を使います。日本やドイツはそれらの化学物質をコストをかけて処理しますが、中国では垂れ流し状態でコストがかからない。(規制はあるのかも知れませんが、守られていないのでしょう)これでは、日本やドイツはとてもコスト的に敵いません。


写真は、中国蘭州のホテルの洗面台の水道。「非飲用」と書いてあります。単に除菌が問題であれば、煮沸すれば飲めるのでしょうが(最初はそう誤解していました)、そうでなく、工場からの有害物質を含んだ水が川に流れ込み、それらの化学物質の混入のために煮沸しても飲めないのです。

日本のメーカーの太陽電池パネルも、最近は太陽電池セルは中国製というものが多くなったそうです。つまり、高価格の固定価格買取り制度のために、日本の消費者が払う電気料金は高くなり、その資金は中国に支払われて、中国での環境破壊を引き起こしているといえます。

今後、太陽電池の寿命がきて廃棄する際に、砒素、カドニウム、鉛などの重金属の猛毒物質が適正に処理されるかどうか極めて疑問です。


これだけの環境破壊を引き起こしている、あるいは将来引き起こす可能性があるにもかかわらず、自然エネルギーの宿命として、基幹エネルギーにはなり得ないということも明らかになりつつあります。ドイツであれば、フランスなどの近隣諸国から原発で発電した電力を融通できますが、日本の場合は、結局、基幹エネルギーとして同出力の火力がないと安定した供給はできないという問題があります。

ただ、風力や太陽電池を基幹エネルギーとしてではなく、補助的なエネルギー源として活用することには大賛成です。

さて、最後に原子力。本当は、現在開発中の核融合が実用になれば、燃料は無尽蔵、高レベル放射性廃棄物はなく、環境に優しく、安全性にも優れたエネルギー源となるのですが、その実用化は早くて今世紀なかばで、まだまだ時間がかかります。

やはり、現在の核分裂を利用した原子力発電の最大の問題は安全性でしょう。福島の事故が起こった時、多くの原子力専門家は『どうして事故になるんだ!?』と意外だったと思います。少なくとも日本の原発は、何かあっても放っておいたら自動的に事故が収束すると習ってきたし、思っていたからです。制御棒を引き抜いて瞬間的に暴走しても、負の温度係数で反応率が下がって自動的に止まるし、電源を喪失しても、自分の熱で自動的に冷却水は回る、だからこそ、安全なんだと思っていました。

その後、福島の原子炉が極めて古い設計であって、米国の内陸に立地していた原子炉をそのまま海辺に持ってきたということが分かりました。米国の内陸で怖いのは竜巻だから、大切な非常電源は地下に設置する。日本の海辺で怖いのは津波だから非常電源は高い所に設置するという発想はあったかもしれませんが、そのためには設計変更が必要で、原子炉の設計変更というのは、ガチガチの規制のために極めて面倒だったのでしょう。また、電源を喪失しただけで爆発するなんて、現在の原子炉の設計基準からいえば言語道断です。

福島のような古い原子炉は廃炉にして、第三世代の、より安全性に優れた原子炉を新設すべきですし、現在開発中の第四世代の原子炉の開発を早めるべきと思います。

特に、第四世代の原子炉は、耐核拡散性があります。つまり、パッケージとして原子炉を発展途上国や北朝鮮に売っても、そこからプルトニウムなどの原爆の材料を取り出すことは不可能となっています。

実は、原発の最も大きなリスクは、本当は核不拡散の問題だと思うので、第四世代原子炉の開発は重要だと思います。