リスク評価のできない人々へ その2

To people who can not make a risk assessment -2-


放射能のリスクを生活のさまざまなリスクと比較した表がありました。

さまざまなリスクを比較する

全て学術論文の参考文献のついたものです。そのうちのいくつかを下に転載しました。

放射線のリスクについては、広島や長崎の被爆データなど日本を含め世界の事故や医療被曝など、多くのデータにより導かれたもので、被曝線量が100ミリシーベルトを超えると発癌率が生涯で0.5%増えるといわれているもの。100ミリシーベルト以下では、影響が認められないのですが、ICRP(国際放射線防護委員会)では、LTN仮説(しきい値なし直線仮説)をとっています。(注1)

さまざまな原因によるリスクの減少と増大

カテゴリ 生活 疾病 相対リスク比
(倍)
備考 参考文献
放射線 100mSvの被ばく 全がん 1.005

飲食 フライドポテトの過食 食道がん 1.2
[9]
飲食 食物繊維の摂取 胃がん 0.7
[16]
飲食 飲酒 胃がん 1.3 女性のみのデータ [20]
飲食 飲酒 肝臓がん 5.7
[21]
喫煙 タバコ 肺がん 3.7
[30]
喫煙 パイプ 肺がん 5
[37]
間接喫煙 屋内 肺がん 1.9
[39]
間接喫煙 小児時の間接喫煙 肺がん 3.6
[40]
肥満 高度肥満(BMI>40) 全がん死 1.5 男性 [41]
肥満 高度肥満(BMI>40) 全がん死 1.6 女性 [41]
運動 散歩・自転車(>30分/日) 全がん死 0.7 男性のみのデータ [43]
病気 ストレス 脳卒中 2.5 男性 [57]
病気 ストレス 乳がん 1.6 女性 [58]
環境・職業 医療関係者 白血病死 1.5 女性 [75]
環境・職業 夜間勤務 乳がん 1.1 女性 [76]
環境・職業 深夜勤務 乳がん 1.6 女性 [76]

参考文献
[9] Galeone C. et al. (2005) Br J. Cancer, 92, 2065-2069.
[16] Mendez M. A. et al. (2007) Int J. Cancer, 121, 1618-1623.
[20] Larsson S. C. (2007) Int J. Cancer, 120, 373-377.
[21] Marrero J. A. et al. (2005) J. Hepatol, 42, 218-224.
[30] Park S. M. et al. (2007) J. Clin Oncol, 25, 4835-4843.
[37] Henley S. J. et al. (2004) J. natl Cancer Inst, 96, 853-861.
[39] Botteri E. et al. (2008) JAMA, 300, 2765-2778.
[40] Muwonge R. et al. (2008) Oral Oncol, 44, 446-454.
[41] Calle E. E. et al. (2003) N Engl J. Med, 348, 1625-1638.
[42] Larsson S. C. et al. (2006) Eur J. Cancer, 42, 2590-2597.
[43] Orsini N. et al. (2008) Br J. Cancer, 1864-1869.
[57] Tsutsumi A. et al. (2009) Arch Intern Med, 169, 56-61.
[58] Peled R. et al. (2008) BMC Cancer, 8, 245.
[75] Firth H. et al. (2007) NZ Med J., 120, U2833.
[76] Davis S. et al. (2001) J. Natl Cancer Inst, 93, 1557-1562.

100mSvという、被爆という観点からは極めて高い線量を浴びても、飲酒や喫煙のリスクと比べて、はるかに小さなリスクであることが分かります。子供の健康を心配して、10mSv/年の被爆も許さないという人が、子供の近くで煙草を吸い、間接喫煙で子供のガンのリスクを高めるのは本当に滑稽なことだと思います。

また、0.5%などというガンのリスクの上昇は、野菜をきちんと食べる生活をするとか、運動をするとかで、十分に補償されることが分かります。10mSv/年の放射線におびえて、家に閉じこもり、運動をしない方が、ガンのリスクは高まるでしょう。

もっと重要なのは、表にもありますが、心身に強いストレスがかかると、ガンのリスクが増えます。ストレスによって「自律神経」の働きが乱れることがその原因です。

私は医学の専門家ではないので、ここからは受け売りですが、自律神経とは、呼吸や体温、心臓や血管の働きなどを調整する神経のことです。自律神経には緊張や興奮をつかさどる「交感神経」と、休息やリラックスをつかさどる「副交感神経」の2つがあります。

通常はこの2つが自然とバランスをとりながら働いており、意識的にコントロールすることはできません。しかし、人間関係の問題やお金の不安などの精神的なストレスや、薬の飲みすぎといった体へのストレスなど、強い緊張状態にさらされると、この2つのバランスは崩れてしまいます。呼吸や体温、血圧の調整がうまくいかなくなり、免疫にも悪影響がでます。

まず、過度のストレスがかかると、「交感神経」の働きが優位になり、免疫細胞のうち「顆粒球」が必要以上に増加してしまいます。顆粒球は、体の中に侵入した細菌などを撃退する重要な免疫細胞ですが、その役目を終えて消滅する際に、活性酸素を発生させるため、大量にできると細胞や組織を破壊してがん細胞を増殖させる原因を生むのです。

体内には活性酸素を排除する機能もありますが、顆粒球があまりにふえすぎると働きが追いつかなくなります。それでも、もうひとつの免疫細胞である「リンパ球」が十分にあれば、発がんは抑えられます。しかし、顆粒球が優位の状態では、リンパ球は数も少なく、弱っています。

このように、ストレスによるガンの増加は科学的に証明されており、それは、100mSv以下の低線量被爆について、最大評価である「しきい値なし直線仮説(LTN仮説)」で評価したとしても、その値よりも格段に大きいのです。


日常のストレスでも、放射線を浴びた場合と同様に活性酸素によるDNAの2本鎖切断が起こります。それどころか、放射線を一日1mSv浴びた場合に比べて、ストレスの方がその確率は300倍も高いのです。年間20mSvの被爆を怖れて室内にこもったり、慣れない土地に避難したりしてストレスを受ける方が、ガンの発生率ははるかに高くなるでしょう。