人類全体にとってのリスク

Various risks for the mankind


悲惨な事故や災害が起こるたびに、対策が問題になります。ゼロリスクを目指して、十分な対策ができればいいのですが、現実には、費用対効果を考えて、最も効率的にリスクを減じる対策を講じるべきでしょう。そこで、地震や津波を含め、人類全体のリスクについて考えてみましょう。

人類全体のリスクは、ある年に世界のどこかでそれが起こる確率と、起こった場合の死者数の積と考えます。

まず、隕石や天体衝突によるリスクについて、地球への天体衝突頻度は、直径10m,直径100m,直径500mの天体が地球(大気圏)に衝突する頻度は,それぞれ約10年,6000年,14万年に一度程度と評価されています[1]。
[1] Chapman,C.R. and Morrison,D.,1994, Nature 367, 33.

別の評価では、1mが1年に1回、10mが10年に1回、100mが1,000年に1回、10kmが1億年に1回とあります。1mの隕石は、空中で小規模な爆発がありますが、破片が地面に到達することはありません。10mくらいになると、空中で中規模の爆発があり、一部の破片が地面に到達する可能性があります。先日、ロシア上空で爆発して落下した隕石の直径は15mと推定されています。このクラスの隕石が人口密集地を直撃すれば、1万人規模の死者が出るでしょう。地球全体からみれば、人口密集地の面積は1/1000くらいでしょうから、それも考慮にいれ、

直径10mの隕石が、都市を直撃する・・・1/10年 x 0.001(人口密集帯確率)x 1万人= 1人/年

となるでしょうか。

直径500mクラスの隕石になると、破壊力は水爆に相当し、広範囲を完全に破壊します。居住地帯に落ちれば壊滅的ですし、海に落ちたとしても波高数100mという津波を引き起こすでしょう。気候変動を引き起こすかもしれません。100万人程度の死者を想定すべきと思います。

1/14万年 x 100万人=7人/年

さらに、直径10kmの天体が地球に激突すると、生物が大量絶滅します。恐竜を滅ぼした衝突がこれにあたります。

1回/1億年 x 60億人 = 60人/年

もっと、身近なリスクである、地震、津波はどうでしょうか。

2004年のスマトラ沖地震では、地震とそれが引き起こした津波のために22万人が死亡しました。2008年の中国四川省地震では7万人、2010年のハイチ地震では、31.6万人の死者がでました。日本では、1995年の阪神淡路大震災で6500人、東日本大震災では地震と津波のために2万人が亡くなりました。

世界全体で考えると、10年毎に死者10万人レベルの地震や津波が起こっているといえるでしょう。つまり、リスクとしては、

1回/10年 x 10万人 = 1万人/年

やはり、隕石などと比べると遙かに大きなリスクといえます。

地震や津波よりも、もっと大きなリスクはバンデミック、感染症の世界的な流行です。1918年から19年にかけて全世界的に流行したスペイン風邪は、インフルエンザのバンデミックですが、感染者は世界全体で5億人、死者は5000万人から1億人。日本でも39万人が死亡しました。

14世紀に中世ヨーロッパで流行ったペスト(黒死病)。14世紀はじめにキリスト教会が猫を魔獣と決定して猫撲滅令が出たためネズミが繁殖したためとか、ペスト菌を運んだクマネズミはもともとヨーロッパに居なかったのに、十字軍の時にイスラム世界から持ち帰ったとか、いろいろな原因があるようですが、この時、ヨーロッパの人口は半分になったと言われています。

このバンデミックのリスクは、医療技術や衛生環境が向上しているとはいえ、世界が狭くなった現代は、感染が広がりやすく、リスクは高くなったといえます。突然変異により、あるいは人工的に作製されたウィールスが、既存の治療を受け付けない場合には、素早く世界に広まり、スペイン風邪と同様あるいはそれ以上の被害を引き起こす可能性があります。

リスクとしては、100年に1回、5000万人が死亡すると考えても過大評価ではないと思います。従って

1回/100年 x 5000万人 = 50万人/年

しかし、人類にとって最大のリスクは温暖化による気候変動と思います。気候変動により、大災害が起こったり、飢饉や食料危機が起こり、そしてそれらは戦争を引き起こすでしょう。このリスクは、少なく見積もっても

1/100年 x 1億人 = 100万人/年

更に、大規模な気候変動により、人類の生存が脅かされることになれば、

1/100年 x 70億人= 0.7億人/年

となり、他のリスクと比較できないほど大きなものになるでしょう。

これらのリスクと原発のリスクを比較してみます。現在、世界に約500基の商用原子炉が存在するとして、世界のどこかで炉心損傷事故が起きる確率は100年に3回前後と評価されています。今後、中国で400基、その他の国でも原発の数は増えるでしょうから、1000基になれば確率は2倍になって、100年に6回。1回あたり、チェルノブイリ級の死者がでるとして、そのリスクは、

6回/100年 x 60人 = 3.6人/年

となります。

直接の死者だけでなく、長期の放射線障害や原発事故の避難に伴う死者も入れるべきという意見があるかもしれません。しかし、福島の事故から5年が経過して明らかになったように、福島事故における死者は直接的にはゼロですし、また、WHOなども指摘している通り、今後も被害は出ない見通しです。1回あたり、60人という仮定をどう変えても、桁数が上がることは無いでしょう。

このリスクを恐れるあまり、気候変動にもっとも有効で、おそらく唯一の手段である原発に反対する人は、全世界の気候学者の『温暖化を防止するための人類の英知(原子力)を、愚かな感情で邪魔してはいけない』という意見を考えて欲しいと思います。

以下に、人類にとってのリスクを纏めていますが、私の印象は以下のとおりです。

1.隕石を心配して外出を控える必要はない。しかし、500m級以上の隕石の監視はあった方がいい
2.世界全体で考えれば、地震や津波のリスクはそれほど高くないが、日本の場合は1桁高いリスクとして交通事故なみに考えるべき。
3.蚊とそれが媒介する疾病は人類にとって極めて大きなリスク。
4.人間に対するリスク(殺人)と比較すれば、蚊以外の動物リスクは高くない。ハチは少し怖いが、サメや熊は怖くない。
5.交通事故による大きなリスクは、利便性という、リスクを上回るメリットによってしか許容できない。
6.温暖化とそれに伴う気象変動は、人類全体にとって最大のリスクである。


世界全体の交通事故による死者数や、航空機事故の死者数、石炭火力による推定死者数を含めて、事象ごとのリスクをまとめると、

事象 リスク
直径10m級隕石の衝突 1人/年
原発 3.6人/年
直径500m級隕石の衝突 7人/年
直径10km級隕石の衝突 60人/年
航空機事故 700人/年
地震・津波 1万人/年
石炭火力 10万人/年以上
バンデミック(感染症の世界的流行) 50万人/年
温暖化 100万人/年
交通事故 125万人/年
大規模な気候変動 0.7億人/年
『動物が原因の年間死者数』は右図のとおりです。

蚊がトップで、年間72万人、二番目に危険なのは人間で57万人。これらのリスクと比べれば、海で泳いでいてサメに襲われる危険性とか、山で熊に襲われる危険性は無視できるということでしょう。



地球温暖化についての、NASAのデータに基づく明瞭なデータを防備録としてリンクしておきたいと思います。とても分かりやすい、良く整理されたデータと思います。

実際に気になる事象として、シベリアで起こっている巨大ホールがあります。これも、Natureの記事をリンクしておきます。

こちらも、巨大ホールの記事です。

かつて、リベラル・左派を中心に、ねつ造だとか、陰謀だとかの、地球温暖化懐疑論がありましたが、さすがに最近では下火になっているようです。売名のために根拠の無い発言をしていた武田邦彦氏も最近は口を閉ざしているのかな。民主党でさえ、2020年までに温室効果ガス25%削減という非現実的な数値をマニュフェストに記したくらいですから。