なぜ日本に信号機が多いのか


都心にあるこの病院、日中の周辺道路は常に大渋滞です。

本来は、玄関先に都バスの停留所があるので、そこまでバスで来れば簡単なのですが、大渋滞で時間がかかるので、見舞いに来る妻はJRの駅から1kmあまりを歩いています。

その原因のひとつは、多すぎる信号機。各交差点に信号があり、クロスする道路の交通量が少ないにもかかわらず、無駄な時間を信号待ちに費やしているのです。なぜ、こんなに無駄な信号機が多いのでしょうか。

そもそも、交通ルールは2つの目的をもっています。つまり、

1.交通事故の防止
2.円滑な通行

の2つです。ところが日本の場合、1.>>>2.になっていて、その結果として、

停まっている車が一番安全だ

となっている気がします。

例えば、米国カルフォルニア州の道路交通法には、『追い越しのできない道路で、後ろに5台以上の車が並んだ時は、先頭車は道を譲らなくてはならない』というルールがあります。これは、実に良く守られていて、坂道などでトラックが先頭を走っていて、後ろから乗用車がやってくると、トラックはすぐに路肩によって道を譲るのです。日本のように、悶々としながら遅いトラックについていく必要はないのです。

米国の運転免許の実技試験は、自分の車の助手席に試験官が乗ってきて、試験場の近所の道路を走って簡単な運転操作をチェックするのですが、私の試験の際に唯一の減点となったのは、優先道路から路地に入る時に『停まる必要が無いのに停まって左右確認をした』 "stopped without any safety reasons"というものでした。円滑な交通を妨害したから減点という訳です。日本だったらどこで停まって安全確認してもOKですよね。

交差点のシステムとして、最も優れた形はロータリー、いわゆるラウンドアバウトと呼ばれるものです。右写真は、パリの凱旋門のラウンドアバウト。シャンゼリゼ道路など12本の道路が交わる交差点です。

交通ルールは簡単で、『左側の車がいつも優先』というもの。右側通行で半時計回りに回っているので、先に交差点に入って回っている車が優先ということになります。その車が出ようとした時には、右側、つまり後から入って来た車はそれを妨害してはいけないという訳です。

当初、ラウンドアバウトに慣れていない頃は、右側から車が猛スピードで突っ込んでくるので、ついつい左側車線、つまり内側の車線に入ってしまって、内側でグルグル回るだけになってしまいました。『これでは出れない、こっちが優先なんだからぶつかったら向こうが悪い』と覚悟を決めて、右車線への方向指示器を出して、交差点から強引に出ようとすると、突っ込んで来ていた車が即座に速度を落として、こちらの進路を開けてくれます。

ラウンドアバウトの利点としては、

1.ルールがシンプル(左側さえ、注意していればいい)
2.信号機不要
3.Uターンが簡単
4.グルグル回っている間に進路を確認できる
5.交通量の自動調節機能がある

です。特に、5.は重要で、交差している道路の交通量が変化しても、それに対応して通行量が変化するということです。日本の時間が固定した信号機だと、交差している道路の交通量が少なくても、じっと待ってなくてはなりません。

欠点としては、広い面積を必要とするということです。日本のように狭い国土には合っていない。


その点、米国に多い、全方向ストップ(All stop)の交差点の占有面積は、通常の信号機付きの交差点と同じです。

これまた、ルールは簡単で『先に交差点に着いた車が優先』というもの。

直進、右折、左折に関係なく、先に交差点に着いて一時停止した車が進路を決めてから、次に交差点に入って車が動き始めます。実に整然としていて、1台ずつですが、かなりの交通量処理能力があります。

ラウンドアバウトと同様に交通量の自動調節機能があり、交差している道路の交通量が少なければ、信号機の時間待ちの必要が無いので、通行量を増やすことができます。

日本でも田舎の交差点などは、すべてこの方式でいいと思うのですが、すぐに信号機が付いてしまいます。なぜでしょうか。


日本の場合、渋滞路の裏道として真っ直ぐな信号の無い道路ができて喜んでいると、そのうちに、追い越し禁止のオレンジの線が引かれ、途中の路地に入るところに感応式の信号機がついてしまいます。

一度、その現場を見たことがあるのですが、交通安全協会と書いた車が停まり、路地の入口で議論していて、しばらくしたら、そこに信号機が付きました。

この交通安全協会。免許更新の際に半強制的に加入させられるというので問題になってから、窓口を別にするなどの対策がなされるようになりましたが、今でも勧誘が行われ、その活動内容は不明です。

ひとことで言えば、リタイアした警察官の給与になっているのでしょう。通常、何かの協会の会員になって会費を払った場合には、その会費がどのように使用されたか、会員にお知らせが来るでしょう。ところが、私の知る限り、そのような報告書を貰った記憶はありません。

リタイア警察官の給与なら、それはそれでいいのです。その人が交通の改善に寄与しているならば。ところが、日本の場合、最初にあげた2つの目的のうち、1.の交通の安全だけに注目し、できるだけ車を停めて安全にしようというインセンティブが働き、信号機を増設したり、追い越し禁止を勧めたりしているのではないでしょうか。

信号機の増設などについても、癒着や利権があって、それが無駄な設置に繋がっていると想像します。この辺り、大手マスコミにとって良い調査対象だと思うのですがいかがでしょうか。