退院までの担当看護士さん


この病院では、骨髄移植後の経過がいいと、3週間から4週間で移植病棟の中の個室から4人の大部屋に移ります。そして、更に1ヶ月程度、急性GvHDの症状がなくなり、免疫抑制剤や抗生剤の点滴が投薬になった頃に最低限のリハビリを行います。そして、お試し帰宅で1泊のみ自宅に戻り、再度、病院に戻って問題ないことを確認して退院となります。

個室担当の看護婦さんと大部屋担当の看護婦さんとは、グループが違っていて、それぞれ分担があります。更に、大部屋に移ってしばらくすると、患者ごとに『退院までの担当看護士』が指名されます。

専任ではないけれど、できるだけその患者のシフトに入り、患者の状態を把握して退院までの面倒をみるという役割のようです。


ある日、大部屋で寛いでいると、若い看護婦さんがやってきて、
『○○さんの退院までの担当看護士になりました。○○雪子で〜す』と挨拶しました。
涼やかな一重の眼をしたスタイルのいい看護婦さんです。

『雪子って綺麗な名前ですね。1月生まれ?』

『はい、1月22日です』

『じゃあ、僕と同じ水瓶座だ。血液型は?』

『A型です』

『同じ!僕も、A型になりつつあるとこ。もともとはO型だけど。あのね、この雑誌の今年の運勢によると、血液型と星座の組み合わせ48通りのうち、水瓶座A型は総合運で2位、金運で1位って書いてある。僕はまだA型になりきってないけど、○○さんはいいかも』

『えっ、そうなんですか。ホントだ、嬉しい』

『新潟出身とか?』

『いえ、東京ですけど、おじいちゃん、おばあちゃんは新潟です』

『○○さんは関西ですか?』

『分かる?』

『言葉が関西っぽいなと思ったので。でも、岩手って書いてあったかな』

『出身は愛媛県で、ここ10年ほど青森で働いてた』

という自己紹介のあと、私の日々の担当看護士のシフトに入る割合が高くなりました。

血糖値を測る器具の使い方と、自分でインシュリンを注射するやり方も、雪子さんに教えてもらいました。こういう器具の使い方は、プロである私にはとても簡単です。

『すごい上手です!今まで、一回で全部できた人いません。○○さん、すごい』

とほめられて、少しいい気分になりました。


そのうち、私のグッズに興味をもち、趣味に興味をもち、研究に興味をもったらしく、いろいろ聞いてきます。『太陽って、最後はどうなるんですか?』『宇宙って、どうなっているんですか?』

点滴や消毒、血小板輸血の時など、時間がある時に簡単な科学講義をしました。『また、教えてくださいね』と言い残して出て行きます。

海外旅行が好きで、夏休みごとに1週間くらいの休暇をとって旅行に出ているとのこと。今まで、行ったのは、フランス、イタリア、シンガポール、ニューヨークだそうです。

『えっ、○○さん、全部行ったことあるんですか』

『うん、何度も』

『また、夏休みに海外旅行したいと思ってるんです。どこオススメですか?』

などという会話もあり、入院生活の楽しみがまたひとつ増えたところです。