母とのハワイ旅行の思い出

Beautiful Family in Honolulu


「息子夫婦や孫たちと一緒の旅行中に死ねたら、私は本望だ」

私の母をハワイ旅行に誘ったとき、医師の許可を得ようとした母は医師の大反対に会いました。その時、母が医師にこう言って説得したそうです。

私の母はC型肝炎を患い、それが肝硬変、肝臓ガンと進行して亡くなりました。亡くなる何年か前、すでに入院と自宅療養を繰り返している頃に、母が動けるうちに母をハワイに連れていきたいと、家族旅行を計画しました。

私の父と母、私達夫婦、そして8才になる娘と1才の息子の6人です。母に負担をかけてはいけないので、ホノルル空港に着いてすぐにレンタカーを借り、ホノルル市内のコンドミニアムに入って一週間、親子水入らずでハワイを楽しむ計画でした。

そしてハワイ旅行当日、私達の乗った飛行機は予定どおりホノルル空港に早朝に着いて、昼頃にはコンドミニアムでのんびりしていました。

私は特に観光なんかしなくていい、ハワイの雰囲気を感じるだけでいいと思っていたのですが、むしろ母が海岸に出たがって、ワイキキの浜辺だけでなく、ハナウマベイまで車で足をのばしました。母は海に入ることは無いだろうと水着を持って行かなかったのですが、私や娘が海に入っていると我慢できなくなったのか、下着のままで海に入ってきました。

太平洋戦争を兵士として生き延びた父は、真珠湾に行ってみたいと言いだし、母も一緒に行きたいというので、皆で真珠湾にも行きました。あれやこれやで、意外に忙しい一週間でした。

ある日、ホノルル市内のファミリーレストランに入った時、ウェイターに「大人4人と子供2人」の席を頼むと、窓に面した一番いい席へと案内してくれました。そしてそのウェイターが「You are beautiful familiy!!」と言ったのです。確かに、3世代、それぞれ男女ひとりずつの美しい家族に見えたのでしょう。母に「美しい家族だと言われたよ」と伝えると、とても嬉しそうでした。

それから母は、病院で亡くなるまで、何度もハワイの思い出を語ったそうです。

亡くなる数週間前、喀血と下血をしたと聞いて病院にかけつけました。行ってみると顔はむくみ、別人の様でした。ただ、意識は正常で、私の娘と息子の手をしばらく握り、「よく帰ってきたね」と喜んで、不自由な手で1000円札を出して孫たちに与えました。それから私に「ハワイは良かった」と言うので、持っていたパソコンで一緒に旅行した時の写真を見せました。

私は三人兄弟の末っ子のせいか、姉や兄よりも母に可愛がられた記憶があります。ところが、ずっと面倒をみた兄や、すぐ近くに嫁に行った姉と比べ、私は18才の時に家を出たまま、殆ど親孝行をする機会がありませんでした。

だけど、母と行ったハワイ旅行だけは、母の最良の思い出になったようで、いい親孝行が出来たなあと思うのです。


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